20年前から分からなかったサーブの疑問
20年前に感じ、ずっとわからなかった疑問が解決した気がするので書きます。
その疑問というのは「サンプラスさんのサーブのフォーム」についてです。
テニスを始めた当時、私の憧れの選手がサンプラスさんだったので、サーブについては何となくサンプラス選手のフォームをマネしていました。(今考えると初心者が何の知識もなくマネするにはすごすぎる選手ですが。。)
サンプラスさんのラケットの位置は頭からかなり離れている
当時思った疑問というは、サンプラス選手がトロフォーポーズからラケットを振り始める際にラケットの位置がかなり頭から離れているという点です。
彼のフォームの特徴は、トロフォーポーズに向けて上体をバックフェンス側に向く程ひねる事ですし、ラケットも体の前側からというより右肩近くからまっすぐ上に引き上げてくる感じ。
トロフォーポーズでラケットが肘の位置含めて後ろ目に来るのはわかるのですが、ラケットを振り始めた際のラケットの位置がやけに頭から離れているな、そこだけが彼のフォームでバランスが悪い気がするなと思っていました。
2012年なので引退後のフォームですが
Pete Sampras Serving in Super Slow Motion
当時はプロ選手のフォームは動画では見られなくて、雑誌に載っているフォームの連続写真を繰り返し見ていたので思った疑問かもしれません。(TVで見る試合中継ではスローでは見られませんから。)
そして現在になって感じたこと
ここから20年後である現在に飛ぶのですが、
鈴木孝男選手のサーブ解説
この所、私が参考にしている「ナチュラルスピンサーブ」という考え方について、鈴木貴男選手は、腕の「外旋/内旋」と「回外/回内」を組み合わせた「運動連鎖」でサーブ打つことがサーブスピードを上げ回転をかけるために必要な事だ(力を込めても決して速いサーブは打てない)とおっしゃっています。
すいません。以前にも紹介した動画です。(DVD購入特典向けの合宿の動画)
鈴木貴男選手は「ナチュラルスピンサーブ」の導入方法としてこういう練習方法を勧めておられます。
最初は下からアンサーサーブを打つような所から始めて、次の段階としてスリークォーター気味にスライス回転のかかったサーブを打つ形です。
スローで見るとわかりますが、スリークォーター気味に打つ際、ラケットヘッドは殆ど下がっていない事がわかります。
私の理解では「外旋/内旋」と「回外/回内」の運動連鎖を使って打つ場合、よく聞く「ラケットダウン」という操作は必要無いと考えます。
グリップを強く握らなければ、ラケットヘッドは引かれるまま、フラット系ならバックフェンス側から、スライス系ならやや前方斜め上に振る反対側(背中側やや下方から)、スピン系なら背中側のより下方から「勝手に」追従してきます。つまり「ラケットダウン」を行うとその動きを寧ろ邪魔をしているはずです。
合宿の動画で鈴木選手が最初に見せるラケットダウンをした状態からラケットを背中側から引き上げてくる動きは明らかに不自然ですし、そもそもフラット系、スライス系、スピン系でラケットの軌道が異なるのに同じ位置にラケットダウンする事が正しいようにも思えません。
井上邦夫コーチのレッスン動画
もうひとつ、私が参考にさせていただいている井上邦夫コーチのレッスン動画です。(動画レッスンが話題で今年になってテニス雑誌で連載を持たれたコーチです。)
表現の仕方は違いますが、井上コーチもスイングのラケット面の入れ方で回転系のサーブは打ちわけられる(スライス系、スピン系で違う打ち方がある訳ではない) という風に解説されています。動画でも鈴木貴男選手同様、アンダーサーブから徐々にスイング軌道を上げてスライス系、スピン系と打ち分けられています。
サンプラスさんのフォームに戻りますが、鈴木貴男選手がスリークォーター気味にサーブを打たれる際、ラケットの位置が頭から遠い事に気づきました。
ピッチャーの腕の各関節の角度と投球動作の関係
説明通りに、野球の投球フォーム同様、肘と前腕の角度を90度近くに保って「外旋/内旋」と「回外/回内」を行えば手首の位置は頭から一定距離離れます。
野球のピッチャーがボールを投げる際、振りかぶってからボールを投げるまで、ボールを持つ手は体の右側(右利きなら)を移動して来ますが、上腕、肘、前腕は90度の角度を保っているためボールが頭に近づくことはありません。
トロフィーポーズに至るラケットの引き上げ方は様々ありますが、トロフィーポーズでは脇と肘の角度と胸の上腕の角度を保つ必要があるだろうと思います。
ここまで考えて、これらの事がサンプラスさんのラケットの振り出し位置が頭から離れている理由では? と思いました。
サンプラスさんのラケット位置は頭から離れている理由は
サンプラスさんもトロフィーポーズは取るものの一連の流れの中で行い、高くトスを上げてピタッとトロフィーポーズで停止する選手とは異なります。
ピッチャーがボールを投げるのと同様、ラケットを持つ右腕も止まる感じはなくずっと動き続けています。つまり、サンプラス選手も右腕の「外旋/内旋」「回外/回内」をしっかり使ってラケットを振っているのだろうと考えます。
また、サンプラスさんはサーブを打つ際、高くジャンプしません。せいぜい15cm位でしょうか。これも「ピッチャーが腕をボールを投げる方向に振る」のに近い効率のよい動きなのだろうと思います。
まとめ
長くなりました。
まとめると、サンプラス選手のラケットが頭から離れている理由は、「外旋/内旋」と「回外/回内」を使った運動連鎖でラケットを振るために腕や肘の角度を保っているからだろうと推測します。
ただ、そのフォームが完成する過程では「ピッチャーがボールを投げるようにラケットを振った方が速くスムーズに振れる」というようなシンプルな考えからだったかもしれません。
また、ピッチャーがボールを投げる際、停止するタイミングがないように、トスを高く上げてトロフィーポーズでピタッと停止するよりも「トスは高く上げず流れるように一連の動作で打った方が運動連鎖は使いやすい」し、「ボールを打ちだす方向に強く腕を振れることが大切で高くジャンプすることではない」のかなと思います。