lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

テニスの説明はイメージ的表現が多い。理屈が前提ならもっと分かりやすいはず。(テニス)

テニスの説明で使われるイメージ的な表現

野球やゴルフ等、他の人にやり方説明をする機会の多いスポーツには付き物ですが、テニスでも説明に『イメージ的な表現』が多く用いられます。

「円を描くように」

「ムチを振るように」

「弓を引くように」

「ラケットを前方に放るように」

「ボールを1個分前に押すように」

「両腕を開くように」

その人独自の物もあれば一般に広く用いられる表現もあります。

※最近、テニス雑誌をあまり見ないのでもっとよく聞く表現があったらすいません。

体には多くの骨と筋肉があり、それらが連動して体の動きを構成する訳ですが「この筋肉がこう動いて..」と説明するのは説明する側・理解する側の両方に無理があります。そこで、目の前で見本を見せることで教わる側にビジュアル的なイメージを持たせ、お互いに知っている事柄を例に上げることでそのイメージを更に膨らませるようにします。

要は『説明する側はやり方をうまく説明するのが難しいから、見本や例を上げることで教わる側にそれぞれ"自分なりのイメージを持たせてそれを目の前で再現"させる。教える側はそれを見て修正をアドバイスする。それを繰り返すことで上達を目指す。』というやり取りをしている訳です。

この手順は問題点が2つある

自分のイメージと他人のイメージ

1つ目は、実感があるでしょうが『説明する側が考え実行している事柄(どう打っているか)が、教わる側に"正確に"理解される訳ではない。』といことです。

言葉であれこれ説明しても、それをどう理解するかは教わる側次第。説明のうまさは教わる側がイメージを膨らませる手助けにしかなりません。指導に定評があるコーチが説明しても全然上達していかない人が居るのはそのためな気がします。教え方や教わる側の能力より手法自体にまず課題があるためですね。

説明する側も"理解"できていない

もう1つは『説明する側も自分がどう打っているかを『理屈』で理解していない』だろうということです。自分では打てているのにそれを"理解していない"と言われても全然実感がないかもしれませんね。

この説明手法は、自分が"普段どうやって打っているか""相手が自分でイメージしやすい例"で表現し説明するものです。その手法は一見妥当に見えますし、説明する側、教わる側両方がイメージしやすい例を用いるようにもしています。

ではなぜ『円を描くように』ラケットを動かさないといけないのか?

その表現に"理屈"が含まれていませんね。

説明する側がなぜそういう風にラケットを動かすとうまく打てるのかを理屈を伴って理解・認識しているとこのイメージ的な表現はもっとわかりやすく教わる側の理解を得られると思うのです。

説明する側の意図を教わる側がうまく理解してくれる事を期待したやり方では効率が悪いと思います。

その事は『教わる側が全て教える側と同じように打てる訳ではない、打ち方も人それぞれ違ってきてしまう』という事からも分かります。

体の仕組みや機能、ボールが飛ぶ物理的な要素は共通なので、それらが理屈として前提となっていれば、教わる側は(根拠が明確なので)理解もしやすく、皆同じような打ち方をして練習の精度も上げられると思います。(個性を許容してしまうと一人一人直し方を変えないといけませんね。)

 

  •  
  •  

 

ボールを飛ばすラケットの要素は3つ

ボールを飛ばし回転をかけるラケットの力(エネルギー量)は『1/2 x ラケット重量 x ラケット速度 ^2 (2乗)』で決まり、そのエネルギー量の全てがボールに伝わる訳ではなく、ボール速度・回転量の分配、及び伝わる際の伝達ロスの大きさは『当たり方』で決まります。

テイクバックが大きい、スイングが大きい方が速い・強いボールが打てる気がしますが、実際には『インパクト前後のラケットスピードが同じならスイング幅に関係なくラケットの持つエネルギー量は同じ』です。

"今現在、120km/hで動いているラケットがその速度にたどり着くまでに何cm動いてきたかは関係ない"のは分かるでしょう。

ものすごく簡単に言えば、テニスでボールを打つ際に使われる説明はこの3つの要素で起きる事象を説明するために用いられている感じだと思います。

※ボール自体もエネルギー量を持っている

※実際には、ボールも重量と速度を持って飛んでくるのでそれ自体もエネルギー量を持ちます。スイングせずにほぼ当てるだけのボレーでもボールの速度が速ければそれなりの速度で跳ね返って飛んでいくのはそのためですね。相手が打ってくるボールが速いのでそれに打ち負けまいと強く振ろうとするのは無駄が多く、うまく当たらない確率も増えます。自分でほぼゼロからボールにエネルギー量を加えないといけないのはサーブ位です。最低限200km/hでラケットが動かなければ200km/hでボールは飛んでいきません。

インパクト前後に必要な事柄

ラケットがボールに影響を与えられるのは接触している間だけです。ボールに当たる前、当たる後にどんなにラケットが動こうかボールには影響しません。

ただ、インパクトの時間は0.003~0.005秒と言われていて人の反応速度(0.2秒)でその短い時間を認識、ラケットに調整を加えることは不可能です。

ボールを飛ばすエネルギー量の基となるラケット速度をどんなに速くしようが、正確にラケットとボールが当たらないと思った方向に飛ばないし、伝わるエネルギー量もロスばかりです。

計算上、120km/hでラケットが動くなら(スイングしているなら)、インパクト時間(0.004秒)の間にもボールとラケットは接触した状態で13cm程も前進しています。『打点は空中の1点』として説明されますが、実際は10cm以上の幅でボールを捉えている訳です。

インパクトの0.004秒の間にラケット面を調整することが不可能だということを踏まえれば、ボールに接触する打点の前後30cm位は『ラケット面はボールに向かい続けている』事が望ましく、実際、プロ選手が打っている様子を動画で見るとそうなっています。

モンフィス選手のストローク練習

メチャクチャ速くラケットをスイングしているモンフィス選手ですが、インパクト前後のかなり長い時間、ラケット面がボール、そしてボールを飛ばす方向に向き続けているのが分かります。それが崩れるとミスが生まれていますね。

実際には、単に手や腕の操作でラケット面をボールに向けている訳ではなく、体を回転させる事に伴う足や腕の使い方が伴っている必要があります。でないと、こんなに速くラケットは振れません。

また、ラケットには"慣性の法則"が働くので加速したラケットは『勝手にボールに向かって前進して』いきます。人が手や腕で行う操作がそれを邪魔してしまうのです。

ボレーを打つ際など手に持ったラケットを腕で操作してボールに近づけるのは皆イメージすると思います。

腕で操作してラケットをボールに近づける

仮にですが、

飛んでくるボールに対し『ラケットを投げてぶつける』と考えれば、手を離れたラケットは操作しようもなく、まっすぐボールに当たるであろう空間に向けて飛んでいきます。(重力や空気抵抗はありますが。)

Embed from Getty Images

これは『慣性の法則』によるもので、投げる速度が速くなればなるほどラケットが前進しようとする力は強くなり進む軌道も安定します。

我々がボールを打つ際、テイクバックからフォロースルーまでラケット面が色んな方向を向いていると思います。

ラケット面が色んな方向を向く

慣性の法則で前進するラケットの特性を利用せず単に体の回転だけで打つだけでもラケットが描く軌道は『円』になります。

体の回転だけだとラケットは円軌道

円軌道の中で腕の曲げ伸ばしでラケットをボールに向かわせるのでは毎回スイングも変わってしまいます。

テニスの説明ではこういった理屈が前提となり説明に含まれていないことが多いと思っています。イメージ的な表現はこういったベースとなる情報や理解を前提にその理解をしやすくするためのものでイメージ表現自体を指導の前提とするのは無理があると思うのです。本来はもっと効率よくテニスが上達してよいはずです。理屈は共通なのですから。

 

 

 

理屈っぽいけど理屈を伴わない表現も多い

『スポーツを問わず一般化している理屈っぽい表現』も本当に多いです。

野球やゴルフなどの有名選手やOBがTVの説明で用いたりします。昔から言われているフレーズで、ご本人達も教わったままに使っているのだと思いますが"よく考えると理屈がズレている"と感じるものです。

例えばですが、

「遠心力を使って打つ」

「体重移動をして打つ」 

「腰を落とし、重心を落として打つ」

「最短距離でラケットを振る」

あたりでしょうか。

遠心力で打つ

速度を持ったラケットは慣性の法則により直進し続けようとします。スイングしている人はボールにラケットを当てたいので、ラケットが向かう方向はボール、及びボールを飛ばしたい方向ですね。

一方、遠心力は、回転軸に対して外側に物体を引っ張る力です。 物理的には遠心力という力は存在しないそうで、回転軸の中心に物体を引っ張る力が、物体が慣性の法則で前進しようとする力の方向を曲げ続け、両者の力が釣り合うことで中心に引く力と反対の中心から外側に引っ張る力として感じるということのようです。

遠心力は2つの力の釣り合いで感じる力
いずれにしても"遠心力は中心から外側に向かう力"でありラケットがボールに向かう方向とは方向が全然違います。慣性の法則による前進以外でも、手や腕の操作や足の踏み込みでも何でもいいですがラケットがボールに向かう力は遠心力よりも遥かに大きく直接的です。

スイング方向と遠心力は力の向きが全然違う

物理的に存在しない力である遠心力がボールを飛ばすのに効果があるとは思えません。

敢えて「遠心力で打つ」を説明するなら、「ラケット速度が速い程、ラケットが重い程、ラケットの持つ運動エネルギー量は大きくなり、結果、遠心力 (ラケットを外側に引っ張る力)も大きくなる。遠心力が大きいと円軌道はブレにくくなる。遠心力を感じられるということは体や腕もリラックスできているということ。遠心力を感じられる程リラックスして速いラケットスピードが出せている状態で打てている。」といった事かなと思います。遠心力がボールを飛ばしてくれるという話とはだいぶ違いますね。

体重移動して打つ

「ボールを打つ際、体重移動をしてボールに体をぶつけていくようにしないとボールの勢いに負けてしまう」と言われます。『体重移動をしてボールを打つ』とはある意味、基本のような扱いです。

まず、オープンスタンスから上半身を中心に捻ってテイクバックをし、それを戻すことでスイングする打ち方では、スイング中に体の中心軸の位置は"前"には動きません。ほぼ同じ位置です。 

Embed from Getty Images

次に、深いボールを打つ際など、前側の足を上げたいわゆる『後ろ足体重』でボールを打つことがあります。バランスを崩して打つとボールに力を伝えにくい印象がありますが、プロ選手が下がりながら前側の足を上げて打っている様子を見ると打つボールが弱くなっている印象は受けません。

Embed from Getty Images

私は『体重移動とは、横向きの状態からボールを打つためには上半身を中心に体を回転させていく必要があるが、体の回転軸(中心軸)が両足の中央に合っては腰から上しか回転できない。従って、前側の脚、もしくは後ろ側の脚の上に体の回転軸(中心軸)を移動させて、足先から頭までを1本の軸として回転できるようにする必要があるということ。』だろうと考えています。

Embed from Getty Images

横向きのテイクバック

これであれば、体を捻って打つフォアハンドで回転軸の移動がない事、前側の脚を上げて打ってもしっかりボールが打てる説明がつくでしょうか。

打つ度に異なる状況でボールを打つテニスでは「体重を前にかけて打つ」ばかりでは対応できないですし、体を回転させて打つのに、回転軸が傾く、頭が前に倒れてしまっては腕の動きだけでラケットを振るしかありません。

教わる効果を高めるには説明に理屈が必要

ラケットによりボールが飛び回転がかかる理屈はごくシンプルです。

『できるだけ重いラケットをできるだけ速く動かして正確に当たれば良い』です。

人の体の仕組みや機能は基本、皆、同じであり、これらのことを再現するために必要な手法 (打ち方・体の使い方) は似通っていて良いはずです。

一方、テニスの説明で言われることは『(テイクバック・打点・フォロースルー等の)形をつくること』であり打ち方は個人のやりやすさにかなり譲歩しています。

「テニスは楽しくできればいいのだから打ち方は個性が合って良い」という考え方は合って然るべきでしょうが「うまく打てなければ楽しくない。その原因がその打ち方に合っても?」というのも言えると思います。

楽しくテニスができるため、なかなか上達せずに悩んでいる状態が起きる原因がそれにあるなら、理屈を踏まえた理解 (理屈を前提とした説明というのはなかなか出会えないから) を考えた方が良いのではないかと考えています。