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上達したければバックハンドをスライスに逃げるのを辞める (テニス)

バックハンドストローク

テニスのストロークにはフォアハンドストロークとバックハンドストロークがあります。

英語でforehandとは”手の平側(手の前)”、backhandは”手の甲側(手の後ろ)”で打つといった意味のようです。

フォアハンド、バックハンドとそのものを表す単語として使ってしまいますが、身体の後ろか前か、右か左かという認識は少し違いますね。

初心者はフォアハンドで打ちたい

初心者が最初に習うのはフォアハンドストロークですね。

テニス フォアハンド

腕を手の平側に使いボールに向けていく、当てに行くというのはそれまでの日常生活、スポーツ等でも割と経験がある動作ですし、最初はフォアばかり練習するのでフォアが少し打てるようになってから練習を始めるバックハンドに比べ、皆フォハンドの方が安心して打てます。

結果、バックハンドで打つべきボールもフォア側で回り込んで打つ、バックハンドを避け全てのボールをフォアで打とうとする、最初からフォア側を大きく空けたポジションを取ろうとするといった事が起きます。

テニス 互いにフォア側に回り込んで打とうとする

初心者の段階では、打つボールの速度もゆっくりだし、不安なく打てるフォアで打ちたがるのも仕方がないかもしれませんが、少しずつ練習のレベルが上がる中でそれでは済まなくなってきます。

バックハンドの必要性が増し練習するようになる

スクールならコーチは必要な場合はバックハンドで打つように指導しますし、練習相手もバックハンドが苦手だと感じればそちら側にボールを集めようとしたりします。(自分もバックが苦手だから回り込んだフォアで相手側のバックに打つというシュールな光景になります….. )

このためフォハンド一辺倒だった初心者は「フォアハンドだけではまずい。バックハンドも打てるようにならなくては」という意識を持って練習するようになってきます。

これが初心者から次の段階へ進む境目という感じです。

当然、次の段階に進むのを拒んでそこに留まろうとする方も居ますがそれは個人の考え方なのでしようがありません。

「片手打ちより両手打ちの方が簡単」と「バックハンドをマスターしている」は次元が違う

バックハンドの打ち方には片手打ちバックハンド両手打ちバックハンドがあり、片手打ちより両手打ちの方が簡単だというのが一般認識でしょうが、これは「取り敢えずラケットをボールに当てるのが楽」といった程度の違いです。

片手打ち・両手打ち問わず、バックハンドをマスターできていると言える段階はもっとはるかに上の次元にあります。

プロ選手のように色んな状況でしっかりスピンをかけて返球できる、バックハンド同士のクロスラリーでも打ち負けずラリーが続けられるといったレベルになるのは片手打ち、両手打ち共にかなり難しいです。

仮にスクールのレベル分けが入門・初級・初中級・中級・上級とあるとすれば中級位でもバックハンドでしっかり打てる人、バックハンドをマスターできていると感じる人は全体の1割も居なかったりします。

同じレベルの人達と練習している中では実感が沸かないかもしれませんが、プロ選手の映像だったり自分達よりも上のレベルの人達がバックハンドでラリーを打ち合っているのを見ればその違いは感じられるのではないでしょうか?

 西岡良仁選手のバックハンドクロスラリー

ラケットを持つ腕の関節(肩・肘・手首・指)がボールを打つ方向 (前方向)に柔軟に曲がりやすい特性を持つ、テイクバックで利き腕肩を後方に下げてそれを前方に動かす幅の中で打つフォハンドは多少打点がズレても調整してごまかせてしまうのですが、それらが逆の特性を持つバックハンドではフットワークが不十分で打点がズレてしまうと簡単にミスに繋がります。

逆にバックハンドはフォームが決まってくると調子に左右されなくなりますがフォアハンドは日々調子が変わってしまいます。(だからプロ選手だと攻撃はフォアを使うがバックハンドの方が得意、安心して打てるという人も多い。)

「片手打ちバックハンドよりも両手打ちバックハンドの方が有利だ。片手打ちバックハンドを選ぶ理由なんてない。」といった意見が両手打ちバックハンドをマスターできている段階にある人だけが言っている訳ではないことに注意が必要です。

むしろ両手打ちバックハンドをしっかりマスターできている方なら打てるようになるまでの大変さを分かっているのでそういったことは言われない「どちらでも好きな方でいいよ」と言われる気がしています。

とは言え、片手打ちバックハンドを積極的に勧める訳でもありません。

私は、まったく打てない状態から色々考えてやってみる中で、フォアでもバック(片手打ちバックハンド)でも遜色なくどちらでも自信を持って打てる感じにはなってきました。

『ボールを打つという入り口に立つまでに苦労する片手打ちバックハンド』

に対し、

『入口に立ってボールを打つ所から始められる両手打ちバックハンド』

という図式だと考えています。

「2年経ってもまともに打てる所まで立てないかもしれないならその時間で打てる所から上達を目指す」という説明なら理解もできます。

片手打ちバックハンドを試みる方の多くは『見た目の派手さ』から興味を持たれますからね。

ただ、両手打ちバックハンドを選んだからといってフォア、バックどちらでも同じように打てるようになる。或いは「バックの方が得意だ」となれる訳ではないですね。結局” フォア頼り” という方も多いでしょう。

片手であれ両手であれマスターできるまでやってみないで「片手打ちバックハンドは難しい。やる意味ない。」と言ってしまうのは勿体ないと思うのです。

バックハンドを練習する段階で使い始めるスライス

脱初心者からのバックハンド練習を行う過程で起きるのが“スライス的なバックハンドを使う”という段階です。

ボレーではフォア・バック問わず練習させられますし、バックハンドストロークを練習する中の咄嗟の場面で取り敢えず当てるだけで返球しよう、うまく打てないなりにラケットを当てて返球しようという意思が本来目指しているトップスピン系のバックハンドとは異なるものの、バックハンドボレーやバックハンドスライスに近い“取り敢えずラケット面にボールを当てて返球する”という打ち方をもたらします。

テニス バックハンド 当てるだけの返球

「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」ので打ち方に関係なくインパクト時に一定方向にエネルギーが加わればボールはその方向、角度に飛んでいきます。

我々が各自に様々個性的な打ち方をしていても最低限テニスができているのはこのためです。(プロ選手みたいな打ち方ができないと “全く” テニスが出来ないなら皆やる気が起きないでしょう。)

また、ボールが飛び回転がかかるために使われるエネルギーは

「1. 速度をもって飛んでくるボールが持つエネルギーを反発させる」

「2.自らスイングし速度を持たせたラケットが持つエネルギーをボールに伝える」

のいずれか、或いは両方の組み合わせです。

時間の無い中、ネットに近い位置、相手のボール速度が残っている、飛ばす距離もベースラインからよりも短いボレーは「スイングしない」と言われる通り1メインのショット。自ら上げたほぼ速度ゼロのボールを打つサーブはラケットを加速させないと飛ばせない2メインのショット。ストロークは打つ場所、ボールの状態、飛ばす距離などに合わせて1と2を組み合わせて打つショットです。

テニススクールでは『それぞれの打ち方を形で』説明されるので打ち方を教わる際にこの点は強調されません。

結果、「ボレーの打ち方はこう」「フォアハンドの打ち方はこう」と教わった1種類の打ち方しか引き出しがない、それで打てないボールはミスするか、それが怖いから「当てるだけ」の打ち方になる事に繋がります。

片手で打つということで、「当てるだけ返球」は、ボレーとの連動性の高い片手打ちバックハンドの方は必ずといっていいほど通る過程ですが、両手打ちバックハンドの方でもボレーに近い打ち方として使います。

言い方は悪いですがこれは「トップスピン系のバックハンドをきちんと打ちたいがミスをしたら嫌だ」というプレッシャーに耐えられず、ついこういう打ち方で手が出てしまうもの、文字通り“逃げ”のショットです。

ベースライン付近でも、飛んでくるボールに速度がある程度残っていれば「ラケットをボールに当てるだけ」でも最低限ネットまで届くような返球はできてしまいますからね。

バックハンドは中途半端なスライスばかりになる

このショットの延長線上でバックハンドスライスを打つ技術が増し、バックハンドはスライスを多用するようになる人も居ます。

特に男性は”回転をかける”、”ボールを操る”といった事に優越感を持つので女性よりもそうなる割合が多いですね。片手打ちバックハンドの方はバックハンドスライスを用いることが多くなりますし、片手打ちバックハンドを選ぶのは断然男性という一連の流れもあります。

と言ってもバックハンドをトップスピンできちんと打てない人が打つスライスは今居るレベルでは通用しても多くの場合”中途半端なまま”です。

トップスピン系のバックハンドをマスターするということはただ“打てる”というだけでなく“身体の使い方を理解している”ということです。

スピン系のバックハンドがマスターできている段階の方ならより完成されたバックハンドスライスを容易に打てるはずでスピン系バックハンドへの苦手意識から来るスライス系への”逃げ”が結局自分の成長を妨げていると言えます。

そこまで行かなくても『バックハンド側にボールが来ればついフォアハンドで打とうとしてしまう。回り込むことができない状況ならトップスピン系の本来の打ち方ではなく、ポンと当てるだけのスライスっぽい打ち方でなんとかしようとしてしまう』という段階が続き、成長はそこで完全に停滞してしまいます。フォアハンドだけでそれ以上の段階に進むのは無理です。 

これには技術的な問題と心理的な問題がある

繰り返しになりますが「片手打ちであれ、両手打ちであれ、バックハンドをマスターするのはすごく難しい」です。

この“取り敢えず当てて返すスライス系のバックハンド”の段階はマスターする手前も手前、先はだいぶ長い訳ですが、これを乗り換えなければゴールさえ見えてきません。

コーチは「たくさん練習をし、たくさんボールを打てば、打てるようになる。怖がらずバックハンドで打つようにしなさい。」と言うかもしれませんが、勝ち負けのかからない単なる練習中の1球であっても、自信がない中ミスするかもしれないという不安を抱えたままで打つというのはプレッシャーも大きいですし、実際、努めてバックハンドで打とうとしてもうまく打てない事の方が多い、上達にも繋がらないと思います。

指導に問題がある訳ではないですが、スクールの大勢居て、時間も限られる中で行う練習の仕方(球出し練習など)ではこのバックハンドに対する”心理的な壁”、”技術的な壁”を越えるのはかなり難しいと思います。

コーチや周りの方からいくら教えてもらっても“自分のテニスを上達させるのは自分自身”です。他のショットも同様ですが、教わる姿勢では目に見える上達は見込めないです。スクールに通っても上達しないのはこのためです。

自分で考え変わっていかなければ、いつまでも“なんとなくスライスで返すバックハンド”から次の段階へ進むことはできません。

スライスで打ってしまう段階から脱出する、レベルを上げるには

“技術の問題”“気持ちの問題”の両方をクリアしていかなければいけません。

技術が上がってきても実際にボールを打つ際に不安があれば気持ちが逃げてしまいます。「失敗してもいいからバックハンドで打て」というアドバイスは必要でしょうが、同時にバックハンドの打ち方を考え、理解し、実践できるようになり、色んな状況でしっかりと結果を積み重ね、自信を積み重ねることでようやく咄嗟の場面でも使えるようになるということだと思います。

スピン系のバックハンドを自信を持って打てるようになるには、ボールを捉えるということ、スイング速度と距離感、回転をかけるということ等を体感するのが大事だと考えます。その例が “ミニラリー(ショートラリー)”です。

ミニラリーは練習前のウォームアップで行ったりしますが、普通は皆、ストロークをベースライン付近からの長い距離で打ちたがります。短いボールをネット際の低い位置からショートクロスに打ったりできなければ困るのに何故なのでしょう?

強く打つことがストロークを打つことではなく、距離感や回転を思うようにコントロールできることこそがストロークを打てるということだと私は思います。そういう練習をしない方は短い距離をストロークで打つのが苦手です。ミニラリーをやっても速度が速いし、簡単にオーバーするようなボールばかりになりがちです。

シャラポワ選手のフォームアップ

シャラポワ選手は練習の初めにショートラリーをよく行います。育成された環境によるものでしょうが海外の選手ではとても珍しいと思います。

ウォズニアッキ選手のショートラリー

スピン系バックハンドの技術を上げ、自信を持って打てるようになるための練習ですから距離は短い方がいいと思います。正面に向き合って打つよりもバックハンド側のクロス、ネットに近い短い距離で打ち合えば回転や距離感が実践に近く感じられるかもしれません。

テニス ミニラリー ショートクロス

また、ボールを打つ打点は意図的に低い位置を想定するのがいいと思います。バウンドして頂点から落ちてくるボールをしっかりと待つ、しっかりと引きつけて打つ感じでしょうか。

眼の前にあるネットを越すように低いボールを打つには姿勢を低く保つ必要があり、面の向きに注意してボールを持ち上げる、適度に回転をかける必要があります。

高い打点で打つ方がネットを越すことが楽ですが、打ち下ろすような打ち方だけではラリーは続けられません。バックハンドにおいてボールに回転をかけつつ厚くボールを捉える、ボールを持ち上げるという感覚は低い打点で練習する方が養われると考えます。

テニスのルールではボールは2バウンドする前までに打つことになっていますね。コートにバウンドするぎりぎりのボールを打つのは簡単ではないですがラケットフレームの厚さ分の空間があればスピン系のストロークでボールを持ち上げることは可能です。むしろスライス面で処理するよりも確率が高いと感じるケースもあったりします。

ストロークは応用力が必要

ストロークは”基本の打ち方”で対応できる状況はごくわずかです。

状況に応じた応用の幅の広さが対応力を決めます。球出し練習で打っている基本の打ち方で全てのボールを打とうとすると思うように打てない事が多いです。

逆にボレーは”基本の打ち方”ができれば対応できる幅が広いです。

ストロークよりボレーが苦手な方も多いですね。ボレーは明確にスイングをしないことでラケットをボールに当てること自体はストロークより簡単ですが、皆 “基本の打ち方” をしっかりと理解しないまま、初期の段階(初心者の段階)から自分なりの打ち方をするようになる。結果、思うようにボレーを打てない、ミスが多いという状況になります。ボレーミスが多い人を見れば打つ際の動きがぎこちないし、”基本の打ち方”と比較して考えればミスに繋がる理由は一目瞭然だったりします。ボレーは基本をしっかり守って丁寧に練習すれば、練習すればするほど明確に上達していきます。ストロークを上達させるよりボレーを上達させる方が楽だと思います。(でも、皆、ボレーよりストロークの練習をしますよね。。)

何度も繰り返しますが「片手打ちであれ、両手打ちであれ、バックハンドをマスターするのはすごく難しい」です。

バックハンドをマスターできればテニス全体で大きな穴はなくなると思います。後は各ショットのレベルを上げていけば自身のテニスもレベルアップしていきます。

初心者のフォアハンド一辺倒から、当てて返すだけのスライス系バックハンドの段階に進み、そこに留まっている方はそれを乗り越える手段を考え、自信を持ってバックハンドを打てるようになるべきでしょう。

その過程で「自分はバックハンドスライスが得意」と考えている方も、本来望ましい形は何かを考えたいです。どんなに自信があってもスライスしか打たないのでは相手も対策できてしまいます。ダブルスでも圧倒的に不利ですからね。

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