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ラケットは出来るだけ重い方がいい。問題はスイングの仕方と扱い方 (テニス)

ラケットにおける重量という要素

ラケット重量のお話です。

たびたび書いていますが、ラケットがスイングにより得る運動エネルギーは「1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード ^2 (2乗)」で計算されます。ボールを打つ際、手に持つラケットは1種類だけなのでスイングスピードが速くなる程 2乗の割合で運動エネルギーは増えてきます。

300gのラケットを130km/hと140km/hでそれぞれスイングした場合

1/2 x 300g x 140km/h ^2 (2乗) = 2,940,000

1/2 x 300g x 130km/h ^2 (2乗) = 2,535,000

速度が約108%と増加しているのでその2乗(108% x 108%)にあたる約116%と増えることとなります。スイングスピードが10km/h増えたことで約16%増加したということですね。

ラケットの運動エネルギーはボールへの当たり方により、ボールスピードとボールの回転量に反比例的に分配されますから、シンプルに言えば、スイングスピードが速くなる程、ボールの速度も回転量も増やせます。

※スイングスピードを速くするのは「力 (筋力)」より「正しい体の使い方」です。力でスイングスピードを上げようとするとスイング軌道のブレを招き、ボールへの当たりが安定しないことでラケットからボールに伝わる運動エネルギーにロスも生まれます。テニスをする人が皆プロや競技者のように140km/hを超えるような速いストロークを打ち続ける訳ではないですから、目指すべきは皆が持つ基本的な体の機能と筋力を正しく使えるだけで実現できる安定して適度に速度があるストロークです。

ラケット重量とラケットがスイングで得る運動エネルギー量の関係性

続いてラケット重量による運動エネルギーの差です。

1/2 x 340g x 130km/h ^2 (2乗) = 2,873,000 (113%)

1/2 x 320g x 130km/h ^2 (2乗) = 2,704,000 (107%)

1/2 x 300g x 130km/h ^2 (2乗) = 2,535,000 (100%)

1/2 x 280g x 130km/h ^2 (2乗) = 2,366,000 ( 93%)

ピュアドライブが登場し人気となって以降、ラケットの標準は300g (100インチ)と言われるようになりましたが、前述の通り、ラケット重量が重くなる程ラケットで発生する運動エネルギーは大きくなりますから同じスイングスピードで振れるのであればラケットはより重い方が有利です。

世間には「300gが標準説」“ステレオタイプ(固定概念)” として浸透してしまっており、「ラケットの平均は300gだよ。男性でも290gでも良いくらい。女性なら280g以下とか。重量で言えば、320gとかProstaff 97 Autographの340gなんて重くて使えるはずないだろ!!」と言われると思います。逆に300gのラケットを使ってる人が280gのラケットを使おうとした際「軽いラケットだと打ち負けるからなぁ」と言われたりもします。

でも、考えてみて欲しいのが10g、20gという重量差です。1円硬貨1枚が1g、100円硬貨が4.8gです。300gのラケットを使っている方が、重量バランスが変わらないようラケット全長の真ん中あたりに1円硬貨を10枚、100円硬貨なら(約)2枚を貼りつけた所でそんなにボールの飛びに差があるでしょうか?

図 1円10枚 100円2枚

物理的に手に感じる重さは感じるにしても、100円硬貨2枚、4枚をラケットに貼る (極点に言えばラケットと一緒に手に握るでもいい) ことで、約60gのボールが速度を保って飛んで来るのに対する影響が大きく変わるはずもありません。(自分もラケットをスイングしてボールに対する運動エネルギーを発生させていますわけですし。)

ラケット重量を考える

本題になりますが、“ラケット重量” についてです。

普段300gのラケットを使っている人が、320g、340g等の重いと言われるラケットを手に取ると、「重い」と感じると思います。また、実際、ボールを打とうとするとその色々な場面で「重い」と感じると思います。

私も以前340g超のラケットを使ってみた頃がありますが、手に持っている時、ストロークする際、ボレーをする際、サーブを打つ際、色んな場面でその重さを感じました。ただ、その後、ボールを打つ際の体の使い方を考えることでスイングスピードは速くなり安定してラケットを振れるようになりました。今も320gのラケットを使っていますが、慣れていることを考慮しても、いくらしっかりと振っても重いとか疲れるとか感じることはありません。

恐らく340gのPRO STAFF 97 Autographを使っても、確かに手に持った際は重いと感じるでしょうが、ストロークを打つ際、サーブを打つ際はその重さを苦に感じることもないと思いますし、振っていて重いなぁと感じる部分もほぼないだろうなと思っています。

ラケットを”握る”という話

話が少し反れますが、初心者に近い方を中心に「ラケットをグリップエンドいっぱいではなく、短く握ってしまう」方がいますね。

理由は様々でしょうが、その要因として最も大きいのは「ラケットをボールにぶつける、ラケットを当ててボールを飛ばすという意識」だろうと思います。特にボレーをする際につい短く持ってしまう方がいるのはそのためでしょう。

人は元々、腕がリラックスした状態でも強く振ることができます。

ボールを投げる際、腕に力を込める必要もボールを強く握りしめる必要もありません。リラックスして腕を振った方が速く振れることを経験的に知っているからです。

ただ、テニスはラケットという道具を介してボールを打つ・飛ばすというスポーツであるため「ラケットを操作してボールに当てようとする」という意識が出てしまいます。

物体であるラケットには慣性の法則が働く

ただ、何度か書いていますが、リラックスした状態で腕によって引かれスイングが始まった (加速を始めた) ラケットには、慣性の法則により「引かれる方向に真っ直ぐ進み続けよう」とします。“人がラケットを操作しようとする意識” によりラケットの自然な動きを邪魔しない限り、本来ラケットは安定した軌道を自然と描くようにできているのです。

グリップから引かれるラケット

テイクバック位置で停止状態にあったラケットはグリップ側から引かれて動き出しますが、手の影響を受けにくいヘッド側はその場に留まり続けようとするので、グリップを引く手をスイング軌道の反対方向 (テイクバックがあった位置)に引っ張り続けます。

その後、加速したラケットヘッド側は先行する手を追い越し、慣性の法則で更に前進していこうとします。

フェデラー フォアハンド

このヘッド側が慣性の力でその場に留まろうとする同じ理屈で発生するのがサーブにおけるラケットダウンだと考えます。

サーブ トロフィーポーズ

サーブ ラケットダウン

そう言われて考えてみれば納得感もあるのではないでしょうか?

フォアハンドラケット軌道の例

短い距離で効率よくラケットを加速させるため、慣性の法則をうまく活かすためには体がリラックスした状態があることは必須で、自分の操作でラケットをボールに当てにいっているのではないため、スイングによりラケットが速度を持っている中ではラケット重量は手に負担となることがありません。(速度が増せば遠心力で外側に引っ張られるでしょうが手に負担がかかる程の速度やラケット重量ではないはずです。)

構えの時点では両手でラケットを持っていますしラケットヘッドを立てているためラケット重量が直接手に負担となることはありません。

テイバックにおいても、男子プロの殆どが、構えのラケットヘッドを立てた状態のまま上体を中心に回転させることでテイバックを完了させます。

手の位置も、スイング開始に支障がない範囲で体に近い位置に置いたままにしており、昔のようにラケットヘッド側を予め倒した状態でテイバックを完了させることはありません。

これは “ヘッドダウンの状態を自分で作ること” ですが現代的なフォアハンドでは体の使い方、打ち方の変化により “ラケットダウンという状態を作る” という概念自体が必要なくなっています。

ラケットヘッドを倒したテイバックはラケット重量が手に直接的に負担となりますし、ラケットヘッドが体から離れることでラケットが加速させづらくなります。(円周運動する物体は中心からの距離が遠くなる程、同じ角度を動くためには長い距離を移動する必要があり、長い距離を動くということはそれだけ大きなエネルギーを使わないといけない。ラケットにエネルギーを伝えるのは自分であり、体からラケットが遠い程、加速させづらくなる。)

繰り返しになりますが、ラケットが速度を持ち慣性の法則により安定した軌道を自然と描く中ではラケット重量が手の負担になることはありません。(重いおもりの付いたひもをくるくる回す際に、速度が上がるまでは不安定だが速度が上がり円周軌道を描くようになると手への負担が少なくなるのと同じ。)

同じ事はラケットが速度を持ちやすい、バックハンド、サーブでも言えます。

スイングをしないことでラケット速度が発生しない = 慣性の法則が活きないボレー

一つだけの懸念点がボレーです。

ボレーは基本的にスイングを伴わず、ラケットを動かしても移動距離も短い、速度もでない、ラケットを片手である程度腕を伸ばした状態を保ってボールを捉えるなど、手や腕にラケット重量を感じやすい条件が整っています。

これについてはどうすることもできないので、ラケット重量を上げたラケットに “慣れる” ことと、これまで以上に「飛んで来るボールに対する予測」が大事になるだろうと思っています。

人は道具を変えても直ぐに慣れてしまいます。ラケットを変える、重量が変わる、ガットを変える、ガットを張る強さを変える、道具に関する色々な変化があり、ごく僅かな変化、例えばガットを張る強さを5ポンド変えると言った事にこだわる人も多いですが、具を変えても2週間も打っていれば慣れてくるし、ラケットを変えても1~2ヶ月も使っていれば以前のラケットとの違いを上げられない程違和感がなくなるのは想像がつくんじゃないでしょうか。(ウッドラケットの時代は女性でも500g近い重量を使っていたと思います。)

また、テニスにおいて、飛んで来るボールに対する予測は、初心者の段階から絶対に必要となるものです。全てのボールに対し予測を行い、予め飛んで来るコースや球威、球種等を予測すればこそ速く打てる場所に移動して準備ができるし、スムーズな動き出しも可能となるというものです。反応だけでボールを打つなんて事は特例の特例で普通あっては行けない類のものです。

ラケット重量を重くすることは扱いづらくなる、操作性が悪くなるという印象を持つ方が圧倒的なので「ラケットはできるだけ重い方がいい」と言っても賛同を得られにくいでしょうが、ラケットを変えた際の打感の違いはラケットの種類、仕様の違いによるものです。少しでもボールスピード、回転量を上げたいと思う方は現状のラケットのまま、重量バランスを変えないようにして、オモリを貼って重量を上げる方法は手軽だし試してみていいと思います。

なお、「ラケットにオモリを貼るとラケットがブレなくなる」と言われることがありますが、前述の通り速度を保って飛んで来る60g前後のボールに対したかだか10g程度のオモリをラケットに (局部的にまとめて) 貼ったとしても、打ち負ける、打ち負けないといった変化が加わるはずがないです。これはラケット重量が増えることで手に重みを感じることと、重くなれば安定するはずだという誤解から生まれるものだろうと思っています。(上下40gとかでない限り全然納得感がありません。)

大手メーカーの市販ラケットはものすごい数のテストを繰り返して開発されています。きちんとラケットがボールに力を伝えられる箇所で捉えることができれば、ラケットの運動エネルギーを楽にボールに伝え、飛ばすことができ、ラケット面がブレる打ち負ける (しなる歪むは分かるけど) ような事はないと考えています。
ラケットのセンター軸上のラインとスイートスポット

少々極端に言いますが、ラケットを選ぶ理由は自分が気に入って使えるかどうかで、その根拠は打感の違いだけ。手にもってしっくり来るなら後は気に入った色やデザインで選んでいい位だと思っています。ラケットを選ぶのは自分であり評判や人気などより優先させる条件があるだろうということです。

ラケットがブレなくなるからではなく、スイングスピードが落ちない範囲でオモリを使い重くしてみることはラケット自体を変えるより手軽で意味のあることであり、出来てないのであれば自然な加速や物理法則を活かせる体の使い方ができるようになればもっと直接的なボールへの効果を感じることが可能なはずです。

ただ、ラケットの持つ運動エネルギーは、重量に関しては重くした分増加するだけ(10%重くしたら10%増える)、ラケット速度に関しては2乗で増えるので『スイング速度が同じならラケットを重くする』方が良いですが『まずはラケット速度を上げること』を課題として考えるべきだと思います。

当然、正確にインパクトできないと運動エネルギーも伝達ロスばかりなので、ただ力を込めて速く振る、筋力を上げて速く振ろうとするといった取り組みは妥当ではないです。

人の体の機能や仕組みは300g、文庫本1冊程度の重さをそれなりの速度で振る能力は有しているので問題は『手に握ったラケットをボールに当てる』のではない、体の機能や仕組みをうまく使ってラケットを安定的に加速させる方法を考えることですね。

我々が普段接しているテニスの指導は技術面や”ボールを打つコツ”の類が中心で、普段から我々が使えている皆が同じように持っている体の機能をどうテニスでも使えるのかかと観点が欠けていると感じています。

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