lond日記

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ダミール・ズムル選手に注目してます (テニス)

ダミール・ズムル選手

何人か挙げてきていますが、最近注目している選手の一人がダミール・ズムル選手です。

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ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の男子プロテニスプレイヤー。

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2018年07月23日付のシングルスランキング23位、年齢は26歳。

ATPの登録によると身長175cm、体重70kgとなっています。

写真を見てもATPツアーでは小柄な部類の選手になるのは分かるかと思います。

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A.ズベレフ選手は198cmです。 

お父さんがテニススクールを運営されていた関係で5歳からテニスを始めたそうです。(彼が生まれた時はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中でした。)

2014年の全豪オープンにおいてボスニア・ヘルツェゴビナで初のメインドローでプレイする選手になっています。

顔が面長で身長とのバランスが変に見える所も特徴ですかね。

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髪型や顎髭、丹精な顔立ちもあり全体で見ると少しユーモラスにも見え、お笑い芸人さんに居そうなキャラでもあります。

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どの辺りが注目なのか?

ひとつはプロ転向後、着実にランキングを上げ続けている点です。

2011年にプロ転向で同年に500位内、2013年に200位内、2015年に100位内、2017年に50位内、そして2018年7月に30位内になりました。

全てが順調という訳ではないでしょうが大きなランキング低下もなく毎年のようにランキングを上げ続けて来ています。

優勝はこれまでに3回、2017年にサンクトペテルブルク(250)とモスクワ(250)、今年2018年にアンタルヤ(250)でシングルス優勝しています。

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チャレンジャー大会、フューチャーズ大会に出場していた頃は土地柄からクレーの大会が中心だったようですが、ATPツアーに参加するようになってからはハードコートの大会に多く出場しているようです。通算成績はクレーが25勝28負、ハードコートが60勝50負。全体で言えば94勝85負。

※クレーというとスペインやイタリア、南米の印象がありますが、東ヨーロッパの国 (私が良く見るのはセルビアやドイツ等) はアウトドアのコートはクレーが殆どなようです。

次にプレイスタイルです。

ATPツアーで比較的小柄な選手と言うと、錦織選手(178cm)、先日書いた同じく注目選手にシュワルツマン選手(170cm)、フェレール選手(175cm)等が思い浮かぶのですがいずれも我々がやるようなテニスとかけ離れている印象を持ちます。(持ち前のセンスだったり、強靭な身体の強さだったりが見るだけで圧倒的に違います)

一方、ズムル選手のプレイスタイルはYouTube等で見る大学生や日本人プロ選手のテニスに近い印象を持ちます。

動画:キリオス vs ズムル

 動画: ミルマン vs ズルム

対戦相手の上位選手のような強烈なサーブ、強烈なフォアハンドがある訳でもなく、自分の持てるショットの中で試合を組み立て彼らと相応の試合をしています。

日本の選手とプレイスタイルが似ていると書きましたが圧倒的に違うのは"確実さ""1ポイントを取るまでの手順"です。

YouTubeで見る日本の大学生、プロ選手の試合は1発のボールの威力はありますがいつでもその1発を狙っている感じ。タイミングや読みが違うと不完全な打ち方になったりミスをしたりという印象です。(私なんかよりはるか上のレベルで競っておられるのを承知で言っております。)

ズリム選手はとてつもなく強い上位選手相手に1球1球きちんと配給を積み重ね、相手を自分のテニスの流れに引き込んで試合を作ろうとしています。1発を決めようと無理をしませんし、繋ぐボール、守備的なボール全てが意味を持って配給されている感じです。女子で世界No.1になったエナン選手(165cm)も全てのボールをポイントに繋げる意図を持った配給をする選手でした。

ラリーを見て分かるように打ち合うボールの速度はかなり遅めで敢えてそうしている印象です。強打が好きなディミトロフ選手との対戦でも自分が打つ軌道を上げてペースを遅くさせていました。マレー選手もそういう試合展開をします。

その上でスライスやドロップショットなど相手を動かしスペースを作って丁寧にポイントを取っていきます。かなり動き回るのでパフォーマンス的、トリッキー的に見えますが観客ウケを狙ったものではなく、そういった部分も含めてズリム選手のテニスという事なのでしょう。

トッププロと1-2回戦敗退の選手との差は繋ぐボール、守備的に返球したボールの内容だと感じます。一息つこう、振られて元の状態に戻そうとなんとなく打った意図のない、ポジティブでないボールは、多少の速度があっても1発で決められてしまいますから。

参考にしたいシンプルさ

私は日本人競技者の方などは体格的に小柄である点を意識するあまり無理を強いているような気がしています。(相手に力負けしないように筋トレをして身体をガッチリさせ、1球1球、声を出してラケットをフルスイングして打つみたいな)

身体が大きい方が純粋にラケットの運動エネルギーを高められる要素が多いので有利なはずです。手が大きいのはラケットを重くするのと同じ、腕が長いのは回転軸の中心から遠い方が速度は速くなるという要素 (プロ選手がラケットの先で打つのはそういう意味もあるはず)、ボールを飛ばし回転をかけるためのラケットの運動エネルギーを高められると言うことです。一般的には「力が強いから強く打てる」と言いますが0.004秒程しか接触しないボールにラケットを通して物理的に力を加えるのは不可能ですからね。

時々聞く話ですが、テニスのレベルを上げていく中で身体の使い方、ボールの打ち方は極力シンプルにしていく、無駄を削いでいくことが求められてくると思います。

トッププロになればなるほど、ボールを打つ様子はスムーズでその基となっているのはフォームのシンプルさ、膝を大きく深く曲げお尻を突き出すように腰を曲げて真上にジャンプしつつサーブを打つ、スピンサーブを打つのに背中を大きく反らし戻すことでラケットを右方向に振っていこうとするトッププロはまず居ません。

分かりませんが、周りの選手や先輩がそうやって打っていて力が入りそうだからだとか、こうやって打てばサーブが速くなるみたいな昔から続く伝聞(コツ)を引き継いできている感じがします。

力まずもっと適当で良いという事ではなく、身体の機能や効率的な使い方を考えるともっとシンプルな使い方で同等以上の効果が出せるのではないかということです。

野球の例で恐縮ですが日本を代表するようなピッチャーを見てもそのフォームはかなりシンプル、オーソドックスだと思います。

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人の身体の構造は皆ほぼ同じであり、速く走る、ボールを強く投げるといったシンプルな目的に向けた身体の使い方は皆似通ってきて当然だと私は考えます。

陸上世界大会の100m決勝、一列に並びスタートした選手達の走り方は皆ほぼ同じです。世界一速く走る、その目的の前に個性が介在する余地はないのでしょう。

カリスマ的な指導者の元でテニスを続ける場合、サーブの打ち方、ストロークの打ち方、皆一様に同じようになったりします。その打ち方が正しいかどうかは別にして、効率を突き詰めていくと皆同じ打ち方になる、同じ打ち方が出来るという例でもあります。

日本人と体格が近いズムル選手のテニス、小柄だからといって身体の大きな選手、強力なボールを打つ選手と同じ土俵に立とうとしない、無理のある身体の使い方をしてロスやミスに繋げない、怪我や疲労に繋げない。確実なプレイと戦略の組み合わせで勝ちに繋げていくと感じる点は参考にできるのかなと思います。

ズルム選手を初めて見たのは昨年の全米オープンの時

最初にズムル選手を見たのは、昨年2017年のUSオープン、フェデラー選手の練習風景動画でした。

 LIVE US Open Tennis 2017: Roger Federer Practice

フェデラー選手は大会毎に色々な選手と練習を行います。

同じ国の選手や仲の良い選手、同じような実績の選手と練習するトップ選手が多い中、かなり珍しいタイプです。 練習相手は若手選手やその時点の注目選手等を指名する感じ。この日の相手がズムル選手だったという訳です。

動画を見れば分かりますが練習の合間にフェデラー選手と会話するズムル選手はかなり緊張しているのを感じます。

リラックスした様子で話しかけるフェデラー選手に対しズムル選手は受け答えしつつもフェデラー選手を直視できないといった感じ。子供の頃のズルム選手の憧れがパトリック・ラフターさんとこのフェデラー選手ということなので緊張も当然だろうと思います。

因みにフェデラー選手、ズルム選手が座るベンチの後ろ側がWOWOWの放送ブースだったらしく、フェデラー選手が気になってこちらを見てしまう杉山愛さんが映っています。

フェデラー選手とズルム選手は2015年に全仏オープン、ウィンブルドンと2回対戦しています。(フェデラー選手から見て2勝)

Men's Round 3 2015 - Roland Garros

対戦後のインタビューで「スイス、セルビア、ボスニア、キプロスのような小さな国から有望な選手がでてくるのは興味深い。彼の事は良く知らないが大きな国からの選手が多い中、そういう対戦が今日出来たことは嬉しい」といった事を話されています。

Roger Federer talks about Bosnian player Damir Džumhur

その後に対戦はありませんが、順中にランキングを上げてきた中でのこの指名だったのかなと思います。

なお、今年の全仏オープンでのズベレフ選手との対戦の時、ボールパーソンと激突する事故があったりしました。

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幸い、ボールパーソンは大丈夫でした。

Highlights: Dzumhur Downs Mannarino In Antalya 2018

今年優勝したアンタルヤでもズムル選手らしさを随所に発揮した試合をしています。

対戦相手のマナリノ選手は2017年の楽天ジャパン・オープンで準優勝したフランスの選手。ダブルスもできるちょっと癖のあるタイプのサウスポーです。

ドロップショットを打っても相手が拾って返球してくる所まで計算して使いポジション取りしています。単にラリー、ラリーという展開ではないです。ポイントを取るのに派手さはないものの参考になると思います。

スクールにもよく居る「無駄に強打するヤツはバカ。おれは小技に自信があるから」なおじさんは中途半端だと思いますが、良い意味で「分相応」という戦い方ができる、自分をよく知っているということを考えたいということでしょうか。

プロ選手のような体格や身体の強さがなくても我々が参考にできる点かなと思っています。

 

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