lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

上達のためにテニスを理屈から考えてみる。コツやイメージではない根拠のある理解 (テニス)

目で見た情報とイメージに左右されているスポーツの世界

プロ野球の代表的なバッターがTV番組でバッティングについて質問され、必ず使うのが「○○するようなイメージで」といった言葉です。

自分がどう身体を動かし、ボールを認識してバットを振り、ボールを打っているかを言葉でわかりやすく表現することは難しく、自分のイメージを人に伝える際にはこういう表現の仕方をします。自分のイメージをデータとして相手の脳にコピーすることはできないので相手が似たようなイメージを持ってくれることを期待しての表現ということになります。

ただ、考えてみれば、バットでボールを飛ばす条件は『バットの重さ、バットを振る速さ、そして当たり方』の3つしかありません。ボールをうまく飛ばせる条件が揃えば良いので3番目の当たり方は人それぞれ、色々なやり方があるので「○○流」「○○メソッド」のような物が無数に生まれる訳です。

頭脳派、理論派と言われる有名選手でも似たり寄ったりです。そういう環境で育成され周囲もそういうやり方をしてきているという事でしょう。でも、チーム全員の能力を高めるにはもっと共通化・平準化できないものかと思います。

逆に超一流と言われるようなピッチャーには科学的な根拠を踏まえてボールの飛びや曲がり方、身体の使い方を説明できる方も居たりします。バッティングよりピッチングの方が道具を介さない分シンプルに考えられるのでしょう。

人の身体の構造は皆がほぼ同様な訳です。例えば、世界陸上決勝で選手の走り方が皆個性に溢れているということは起きません。速く走るという単純な目的の前には如何に効率よく身体の機能を使うかという事に集約されるからでしょう。

陸上短距離のスタート

テニスでも上達のための情報やコツが様々に存在しますが、野球の例同様に根拠や理屈を欠き、昔から伝わる伝聞や常識とされる言葉そのもの、説明する際も「○○するイメージで」という表現を多用します。

スムーズにボールを打てる上級者とボールを打つ動きもおぼつかない初心者との違いは技術の違いだけなのか?

「テニスの基本」として皆が当たり前だと思っている、自分は出来ていると思っている内容は言葉通りなのか?

私はスクールに6年以上通っても全然上達しなかったので、教わる・言われるままではなく多くの人が等しく一定レベルまでテニスが上達できる方法を考えたいと思っています。

打てている人が自分のイメージを言葉にする指導ではなく、科学的な理屈や裏付けを踏まえた情報や説明であれば聞いた人達も理解を共有しやすい、自分でどうやればいいのか考えやすいだろうと考えます。

『自分のテニスを上達させるのは自分自身でコーチや周りの人ではない』です。考えるには知識が必要で、自分の状況を理解し、根拠を持って改善、どうやれば良いのか考えることが上達の道だと思います。(見本を見ただけで再現できる天才肌の方はそのプロセスが極度に効率化されてる感じ。殆どの方には無理です。)

ボールを打つ経験は理解の検証に必要ですが、ただボールを打つだけでは調子の維持すらできません。調子が悪くなったからまたひたすらボールを打つ。その先に自分が目指すゴールがあるのかも分かりませんね。

 

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ラケットでボールを飛ばすための条件

ラケットでボールを飛ばすための条件を考えるとこのような感じでしょうか。

・テニスはラケットという道具を使ってボールを飛ばす。

・ラケットは70cm弱の長さがあり、グリップ、ラケット面、両者を繋ぐ部分(スロート)で構成されている。

・ラケット面にはガット(ストリング)が縦・横に張ってあり、実際にボールと接触し影響を与えるのはラケットではなくガット。

ラケットには縦横にガットが張ってある

・ボールの回転はガットがボールに噛む・ひっかかる事でより強く発生する。スイング軌道と縦糸・横糸が直角になる角度が最も効率的にガットが作用する。(+の状態) スイング軌道に対し縦糸・横糸が斜めに交差する状態では板で打っているのと変わらない。(×の状態)

ガットとボールがひっかかって回転がかかる ガットとボールがひっかからないと回転がかからない

・飛んでくるボールはそれ自体速度があり運動エネルギーを持っている。

飛んでくるテニスボール

・停止したラケット面で飛んでくるボールを押し支えるだけでボールが持つ運動エネルギーの範囲でボールを反発させ、ある程度飛ばす事ができる。

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・ラケットはスイングにより速度を得、運動エネルギーを持つ。その大きさは『1/2 x ラケット重量 x ラケット速度 ^2 (2乗)』ラケット重量は固定なのでラケット速度が速いほど運動エネルギーは大きくなる。

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・ボールとラケットが接触し、ラケットの持つ運動エネルギーがボールに伝わる。ただ、伝わるのはごく一部。素振りをしても実際にボールを打ってもインパクト時にスイングが極端に遅くなったりしないことで分かる。

・また、ラケットとボールが接触し運動エネルギーが伝達される際には伝達ロスが発生する。正確に当たらない、薄いカスレた当たりといった"当たり方"の他、ラケットやガットのしなる・歪む・たわむもロスの原因。

※ラケットは飛ぶ・飛ばないと表現されますが、ボールに当たっても変形しない金属バット等の方が伝達ロスは小さい。フレームの厚いラケットは変形しづらい、フレームの薄いラケットは変形しやすいといった違いから生じる「伝達時のロスが小さい・大きい」が飛びに反映されます。飛ぶラケットが何か特別な仕掛けが付いている訳ではない事からも分かりますね。

 

ボール・ラケットに関する条件

ボールやラケットに関する物理的な条件等は次のようなものが考えられます。

・ボールとラケットは物質であり、物質には慣性の法則が働く

・テイクバック時等、停止したラケットは慣性の法則によりその場に留まろうとする。

・スイング時等、速度を持って前進するラケットは慣性の法則によりその直進運動を続けようとする

・テイクバックの停止状態から、ラケットはグリップ側から手に引かれ動き始める。ヘッド側は慣性の法則の法則で留まろうとする。留まろうとする力より引く力の方が強いのでヘッド側はグリップ側に後方から追従するが、留まろうとする力は手をスイング軌道と反対側に引き続ける。

ラケットには慣性の法則が働く

・この現象が、サーブにおいて発生するのがラケットダウン。ラケットダウンは起こすものではない。必要な事はグリップを強く握りしめずリラックスしていること。

ラケットに働く慣性の法則でラケットダウンが起きる

遠心力という力は存在しない。慣性の法則で直進運動をし続けようとするラケットがグリップを持つ手によって身体側に引かれる事で軌道を曲げられ続け円軌道に近くなる。2つの力の作用により手の中心に引く力と逆向きの力が発生しているように感じるのが遠心力。(直進速度が速くなる程強く感じる)

遠心力の説明

・ラケットが直進運動する方向は自分がボールを飛ばそうとしている方向・角度に向けてである。遠心力は向きが全く異なる。ボールを飛ばすのはラケット速度が関係するので純粋に直進方向への加速を考えるべき。「遠心力で飛ばす」は遠心力を強く感じるほど速度が出ているというだけ。

遠心力でボールは飛ばない

・スイングはグリップが先行してラケットが引かれるが、加速により、身体の回転 < 手や腕 < ラケットヘッド側と身体から距離がある方が速度は速くなる。加速したラケットは慣性の法則で直進運動をし続けようとし、スイング途中で身体、手や腕を追い越し、更に前進して行こうとする。 

ラケットヘッドは加速により身体や腕を追い越して進んでいく

フォアハンドスイング1 フォアハンドスイング2

・円運動をする物体が同一角度動く場合、中心から遠い物体の方が同じ時間でより長い距離を移動する必要があるからその分高速である。

円運動で中心から遠い物体の方が速度が速い

・ただし、テイクバックの速度ゼロからラケットが加速するエネルギーは手の引き、身体の捻り戻し、足で地面を踏む反力等から生まれているので、スイングによりラケットが身体を追い越す前後でこれらの力の供給はゼロになる。(後は惰性) 結果、前進によりラケットの運動エネルギーは消費され、速度は落ち、手に引っ張られる形でフォロースルーを迎える。

フォアハンド ラケット軌道

フォアハンド フォロースルー

20数年前、スピンをかけてストロークを打つ事が標準化された際、それ以前のコンチネンタルグリップではスピンがかけられないので「グリップは厚く握る」と言われるようになり、回転のかけやすさから「打点は前に取れ」と言われるようになったと考えます。少々極端ですが「グリップは厚いほどよい。打点は出来るだけ前に取れ。」という指導も皆無ではないでしょう。

ただ、身体よりも前の位置で、打点を前に動かしていくほど、ラケットの加速度は落ちている訳でその時点でラケット速度がピークから落ちてしまっていてはボールを打つためのエネルギー量も下がってしまっているでしょう。

最近のトッププロのストロークを見ると、ウエスタングリップ位の厚いグリップで打つ選手のインパクトは我々がイメージするよりも身体に近い位置で打っているように見えます。

錦織選手

ジョコビッチ選手

両選手の "打点" が 身体から近く見える理由は、ラケット加速度に加え「打点が空中の1点ではない」ということも関係すると考えます。

 

 

 

インパクトにおける諸条件

ボールとラケットが接触することによりボールは飛びます。インパクトに関係する諸条件は次のようなものが考えられます。

・インパクトの時間は0.003~0.005秒と言われる。人の反応速度は0.2~0.3秒と言われておりインパクトの瞬間を人が認識し操作することはできない。

・スイング時ラケットは速度を持って前進している。仮にインパクトを0.004秒、ラケット速度を120km/hとするとボールとラケットは約13cm接触状態(触れて潰れて復元しつつ離れるまで)で飛び出す方向・角度に向け前進している計算になる。

インパクトは10cm強の幅で行われる

・我々はグリップを握りラケット面を差し出して"打点の位置"を確認させられるが実際には打点は"空中の1点"ではない。13cmの幅 (ゾーン)で打っていると理解すればそれが正確なインパクトを考える根拠になる。

打点は空中の1点ではない

・ラケットがスイングよって得た運動エネルギーがボールとの接触で一部伝達され、当たり方によってボール速度と回転に反比例的に分配される。速度に多く振れば回転は減り、回転に多く振れば速度は落ちる

・ボールが飛ぶのと同様、ボールに回転がかかるのも物理現象。トップスピンはボールに縦方向の回転がかかれば発生する。条件が整えば良いだけだから発生する方法は何でも構わない。(スピンをかけるにはこうしないといけないといった盲信)

ラケットがボールに影響を与えられるのはラケットとボールが接触している0.003~0.005秒の間だけ。インパクト前・インパクト後にラケットをどんなに動かしても影響は与えられない。(インパクトの重要性)

ラケットとボールは10cm以上も接触状態で動いており、インパクトの0.003~0.005秒を人は認識できない。結果、インパクトの前後を含む一定の長さ(20~30cm位)はラケット面が安定して飛ばしたい方向・角度を向き続ける事が重要。ラケット速度を速くするなら尚更である。接触中の13cmでラケット面があちこち向くならと考えれば分かる。

※ダイエーホークスの内川選手、元メジャーリーガーの岩村明憲さんの両方がインタビューで「ボールとバットが接触する前1cmと後1cmを含めたインパクトに集中する」と話されていました。バットとボールの接触時間とスイング速度がどの位か分かりませんが同じ事を指していると考えます。

・同じ理由で回転をかけようとラケット(ラケット面)を下から上に強く角度で持ち上げる中で正確なインパクトをするのは難しい。

擦り上げるスイングでは正確にインパクトできない

スイング軌道・ボールの打ち出し軌道に関する条件

ラケットをどう振るか、ボールをどう飛ばすかといった点に関する諸条件です。

・ベースライン中央付近、地上から80cmの打点位置から、ネット中央の一番低い部分の2倍の高さ(約1.8m)を通過させるための打ち出し角度は『水平 +4.9度』でしかない。

ネットの2倍の高さを通過する打ち出し角度

※ピッチャーがマウンドの上からキャッチャーのミット目がけて投げ下ろす角度も"5度程度"だそうです。ボールは水平-5度の角度で斜め下に進んでいくという事ですね。もっと角度があるように感じますがストローク同様、多くの場合そういうものなのでしょう。

「インパクトにおいてラケット面は地面と垂直」と言われるが、ボールを真上に突き上げるのにラケット面を真上に向けない人は居ない。つまり、地面と垂直ではなく、ボールを打ち出したい方向・角度に対して90度に向けるが正しいと考えられる。

ボールを打ち出す方向・角度に対しラケット面を90度

・ネットの2倍の高さを通過させるための打ち出し軌道『水平+4.9』は、周りから見ればほぼ水平に振っているように見えるはず。

・スイングが遅い場合はラケットの運動エネルギー量が小さく、ボール速度が出ないから遠くまで飛ばない。必要に応じて打ち出し角度を上げる必要がある。(その場合も打ち出し角度に対して90度のインパクト面。常に地面と垂直ではない。)

・ラケット速度が十分速ければラケットの運動エネルギー量も大きい。ボール速度を保ちつつ回転量も確保できる。遠くまで飛ばすためにボールの軌道を上げる必要がないから速度に対しベースラインに収まる回転量が確保できれば良い。(安定的に回転をかける技術は居る。)

ラケットをスイングするのは第一にはボール速度を上げるため、回転に割り振るエネルギーは最低限で良いはず。トップスピンロブなど作戦的に使うのでなければ、回転をかけようと薄い当たりでこすり上げる(ロスが大きい)、 正確に当たりづらくなる、ロスをカバーするために一生懸命振って疲労に繋がる、ボールに速度がなく遠くに飛ばない分軌道を上げる、といった行動に意味はない。

※ボールを飛ばすため、打ち出す方向・角度に向けてラケットを振っていく

・プロ選手のスイングを見ると、最初から最後まで斜め上に振っていく回転のかけ方ではなく、ボールを前方向に飛ばすため水平に近くラケットをスイングしインパクト前後にラケットのヘッド側を持ち上げる工夫をすることでスイング速度、飛ばしたい方向へのスイングは維持しつつ回転をかけている。

プロ選手のストローク軌道 

我々が教わるような最初から最後まで斜めにラケットを振っていくスイングとは異なる。 (どちらが正しいという意味ではない)

ラケットのスイング軌道

・20年位前に『ワイパースイング』という言葉・打ち方が広まった当時は、肘から先を巻き込む様に、バイバイと手のひらを振る(手のひらを外側・パームアウト)ようにして打てと教わり、今もワイパースイングはそういうものだという認識が残っている。

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昔のワイパースイングは、ラケットがガットの進化もあり、それまでのフラット気味に打つボールに対して「回転をかければボールの威力が増す」という認識が合ったと想像しますし、今もそう考えている人は少なくないでしょう。

ただ、結局は

「ラケット速度を上げなければボールを飛ばす・回転をかけるための運動エネルギー量は増えない。」

「スイングが速いから当時のプロ選手のワイパースイングは成り立った。そもそも前に速く振れない人が回転を多くしようとすればエネルギーは回転に多く割り振られ速度は上がらない。結果、高い軌道のロブのような軌道で打たないと相手コート深くまで届かなくなる。(トップスピンが流行った当時の一般レベルのテニス)」

「回転を増やそうと擦り上げるスイングになればインパクトミス、伝達ロスが大きくなり、回転はかかっても前に飛ばない遅いボールになる。」

といった部分は、物理法則に縛られるものであり昔も今も変わりません。

ラケットをより速く振るには? 速めたラケット速度を活かすには? と考えれば、ラケットはボールを飛ばしたい方向に速く振る方が良いと考えられるし、速く振っているラケット速度を活かし、その高い運動エネルギー量を活かしつつ速度に回転を加える方が理にかなっていると考えられるでしょう。

20年前と現代の男子プロのテニスを比べれば日々進化してきているは明らかなのに我々がスクールで教わる指導が当時からあまり変わっていないのは不自然ですよね。スポーツが科学的に分析されてきている訳ですから根拠を持ってテニスの上達を目指したいです。

 

 

例: バケツに入った水を前方にぶちまける

ここで『バケツに入った水を前方にぶちまける』という例を使って、フォアハンドストロークでラケットを振るという動作を考えてみましょう。 

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動画で見てみます。 

この行動で考えられる条件は以下のようなものがあります。

・バケツに入った水に対し直接飛んでいく力を加えることはできない。ここで行っているのは「手にもったバケツを加速させることで水に速度をもたせている」ということ。

※走っている電車の乗客全員が電車と同じ方向に同じ速度で進んでいる。人も慣性の法則の影響を受けるので、止まった状態ではその位置に留まろうとし、直進運動をし続けようとしする。急発進や急停車で倒れそうになるのはそのため。

・バケツを加速させる要素は、身体のねじる戻し、両足で地面を踏む反力、後に下げたバケツを手で引く力など。テニスのフォハンドと同じ。

・バケツは水をぶちまけたい方向に向かってまっすぐ加速させていく。遠心力を使おうと身体を回しながら円軌道の中で水をまっすぐぶちまけるのは困難。(水の入ったバケツを振り回して遠心力でこぼれませんという話とは違う)

・準備段階として対象に対し横向きを取り、身体の回転により目標方向に身体を向けていくが水の入ったバケツ(中身の水も)の進む方向はあくまで慣性の法則が働く直進方向(ぶちまけたい方向に向けまっすぐ)であるということ。身体の回転とバケツの進み方は同じではない。

・バケツの入った水はかなり重い。バケツを加速させて水をぶちまけ始める位置はバケツが身体を追い越してすぐ、腰に近い辺りを選ぶと思う。水の量が少なければもっと対象に近い位置でぶちまける方が方向性は保てると思われるが、重いバケツを振る際、腰に近い位置で水をぶちまけるということはその位置がバケツに力を加えられる最終地点(最高速に近い状態)であると自覚してのものだと思う。

どうでしょうか?

ラケットでボールを打つという動作は特別なものではなく日常生活で我々が行っている事と同じだと考えられる要素がたくさんありますし、例えば「フォアハンドは回転で打つ。強いボールを打つためには強く身体を回転させないといけない。」といった認識が実際にラケットでボールを飛ばすという物理的な事象を"的確に見れていない"のを感じます。

横向きから身体を目標方向に回転させつつラケットを振る。その際、身体の回転に重きを置いてしまうと腕やラケットの軌道も回転運動に引っ張られ、肩-腕-ラケットは同一角度のまま回転してゆき、スイング軌道は円に近くなるでしょう。

身体の回転でラケットを振る

実際にこういうスイングの方は居ます。いつまで経ってもラケットヘッドが身体を追い越していかないスイング。

一方、横向きから身体を回転させる際、軸足(右利きなら右足)で地面を踏む反力、身体の捻り戻し、腕によりラケットの引き等を連動させ、ラケットを目標方向(ボールと接触する地点及びボールを飛ばしたい方向・角度)にまっすぐ加速させていくと考えればスイング軌道は違ってきます。

身体を回転させつつラケットはまっすぐ振る

加速を受け、慣性の法則で直進するラケットが進むためのエネルギーの供給を受けられなくなる身体の位置を通り過ぎた後、ラケットの加速度は下がり、腕に引っ張られる形で非利き手側に巻き付いていく。腕の関節はそれを支えるために内側に曲がっていく。惰性という感じですがそれがフォロースルーとなりますね。

ラケットをスイングする目的はボールを飛ばすため(ラケット速度を上げるため)。インパクトの瞬間を人間が認識・操作できない事、10cm強の幅で行われる事を考えれば、インパクト前後のラケット面の向きはボールを飛ばしたい方向・角度に向き続ける方が確実。身体を回転させるのはラケットを加速させる過程・手段の一つであり、回転とラケットが進むべき方向は分けて考えたいです。

「回転で打つのではない!! 打ちたい方向に真っ直ぐ打つんだ!!」という単純な思考ではそれまでの取り組みと変わりません。

足を踏む反力、身体のねじり戻し、腕の引き等、力を発生させる各要素がラケットの加速、加速させた向きに発生させる方向が合っている。そういう状況が効率が良く、皆、自然とそういう使い方をスムーズにできるのだ。

バケツの水の例はそういった事を表していると考えます。

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ボールが飛び回転がかかるのは物理現象です。

都度変わる状況の中、思うようにそれらを発生させるには?

ただ、ラケットを強く振ってボールを打つというだけではテニスというスポーツを行うには不十分な気がします。 

センスや才能に自信がない分、理屈で理解の遅れを埋める

私は『自分の頭で理解してからでないと動けないタイプ』です。

実際にボールを打ちながらでも考える事はできるでしょうし、効率も変わらないのかもしれませんが、1つ1つ手順を踏んでいきたいと思ってしまいます。

テニスの指導は昔から言われている事柄が常識のようになっており、自分が聞いた事、教わった事をその言葉のまま人に伝える、説明する事に慣れてしまっています。その内容に疑問を持つことがありません。

フォアハンドを打つ際、横向きを作りますが、何故横向きを作るのか、作らない場合と何が違うのかといった点について情報は示されませんね。

飛んでくるボールの持つエネルギーを支え反発させるためにはラケットを持つ利き腕肩位置が身体の前側にある状態が足や身体でラケットを支えやすいのですが、反発させるだけでなくラケットを加速させてよりボールを遠くまで飛ばす回転をかけるには利き腕肩の位置を一旦下げてラケットを加速させる距離を作る必要があります。

手や腕で押し支える

フォアハンドで横向きを取ると利き腕肩は"身体の後ろ側"

フォアハンドのテイクバック

バックハンドで横向きを取ると利き腕肩は"身体の前側"

バックハンドのテイクバック

人の腕の関節(肩・肘・手首・指)は肩の外側から内側にかけて多く柔軟に曲がります。外側に曲がるのは肩と手首位です。

腕の関節は内側に柔軟に多く曲がる 

腕の関節は外側に向けては柔軟に曲がらない

フォア側は一旦下げた利き腕肩と腕の関節の柔軟さを使ってラケットを加速させ、バック側は最初から利き腕肩が身体の前方にあり、関節も柔軟に曲がらないので軽く身体を捻って戻す程度、足の力を使いラケットを加速させる。フォアハンドほどダイナミックに身体は回転させません。

バックハンドのインパクト

こういった理解の数々が正しいのかどうかは教わった事がないので分かりませんが、私なりの理屈としてボールを打つ、ラケットをスイングする際の根拠としています。

そもそも「こうやって打つのが正解だ」と決めるのは世界的なテニスの権威でも難しいと思っています。よく「俺が言っている事は正しい。お前の説明は間違い。」のようなやり取りがありますが私は賛同できません。自分が理解でき根拠とできそうな情報を参考にすれば良いでしょう。今回書いたような理屈や根拠から考えてよりスムーズにミスなく打つには?とは考えられますがそれらも全て自分がどう打つか考えるためです。

自分のテニスを上達させるのは自分自身です。コーチや周りの人ではありません。自分のテニスを理解し、考え、工夫するには知識が要ります。

2000本安打を達成したソフトバンクホークスの内川聖一選手は、横浜時代に元プロ野球選手の仁志敏久さんから「常に考えて打席に立て。考えるというのは、うまく出来ても失敗してもなぜそうなったか自分で説明できるということだ。」と教わったそうです。知識や理解がなければ説明はできませんね。

知識とはコツ等とは違います。身体はどういう仕組みで、どう機能し、ボールはどうやって飛び回転し、ラケットを振るということとどう結びつくのか? そういったシンプルで皆が等しく理解できそうな情報が上達に結びついていくのだと思います。

2017年シーズンが始まる前のインタビューでイチロー選手が「身体の仕組みを知り理解する事が大事。指導でも目に見える部分(肩に力が入っているから肩の力を抜けとか)しか目を向けない、言えない人が殆ど」と言われていました。

テニスのでも「肘が下がっているから上げろ」「肩が上がっているから下げろ」 といった目で見える事象をそのまま口にするアドバイスは日常的に行われています。人は自分が持つ知識の範囲でしか考える事ができません。知識がなければ目に見える事をそのまま口にします。その事象が起きている原因は人それぞれ、様々な原因で起こっていたりしているので、そのような指摘をされても殆ど改善されないのは実感があるでしょう。

身体の仕組みを理解し、どう使うから動きがどう繋がるのかといった知識があれば、目に見えない部分を含めてより的確に解決に近づけると思います。

そういう考え方をする、そのために必要な知識を蓄えるというということがテニスというスポーツで(イチロー選手の話で言えば野球でも)習慣付けられていないということでしょう。

「○○するようなイメージで」「インパクトではこういう形を作る」といった説明でなかなか上達せず悩んでいる方は、コツを知りたがるより考える事から始めるのがよいと思います。