PR
スポンサーリンク
スポンサーリンク

片手打ちバックハンドでトップスピンをかけて打つ。スピンをかける要素を考える。(テニス)

片手打ちバックハンド インパクト

近年の復権は片手打ちバックハンドが進化したこと

トッププロが多く使い始めた事で30年近く前から広まった両手打ちバックハンド、一時は“片手打ちバックハンド不要論(全ての面で両手打ちの方が上回る)”も言われていました。

ただ、2018年現在の男子テニスを見ても、片手打ちが両手打ちに劣っているというケースは見なくなり、むしろ片手打ちの選手の方が目立っています。

男子テニスは進化の歴史です。現代の片手打ちバックハンドは昔と比べ大きく進化してきており、その結果が近年の復権なのでしょう。

ただ、我々が教わる内容は20数年前と変わっておらず、人数の関係もあり、スクールでは「説明を聞き、見本を見たら、取り敢えず打ってみましょう」という指導が中心です。

自分のテニスを上達させるのは自分自身ですから片手打ちバックハンドに取り組む方は周りの方と同じ事をやっていても上達するのは難しいはずです。レッスンで教わる内容で十分ならもっと大勢マスターできている方が居るはずですからね。 

ボールが飛び回転がかかるのは物理現象、方法は一つではない

今回は「片手バックハンドで打つトップスピン」についてです。

私が考えるのは“誰でも等しく一定レベルまで上達できるテニス”なので、普通に打つだけでスピンがかかる前提条件のようなものです。コツではありません。

大事な点は「ボールが飛ぶこと、トップスピンがかかることは物理現象であるという事。物理現象ですから “発生要因さえ揃えば” 誰にでも発現します。

テニスにおけるボールを打つ、その打ち方というものはうまく出来ているもので、長年多くの人が携わってきた結果、必要となる要素が包括されていると感じるのですが、普段のレッスンで教わる内容や表現は“ボールを打つという動作の一部分、表面的な要素”を表しているに過ぎません。

「部屋に入ったら壁のボタンを押してください。そうすれば電灯が点きます。」

は手順の説明として妥当ですが、その明かりがどういう仕組みで点灯しているか考えると理解が根底から変わります。

自分のテニスを上達させるためには自分で考える事。考えるには知識が必要で、ボールを打つ経験の中だけでは蓄積できません。何故うまく打てるのか、何故自分がうまく打てないのか、成功しても失敗してもその理由を自分できちんと説明できる事です。

ガットが縦横に張ってある以上、適切な当たり方、角度がある

一般的にラケットにはガットが縦方向、横方向に90度で交差するように張ってあります。

ガットの縦糸・横糸

ボールと接触するのはガットだけですから、スイングによってラケットに持たせた運動エネルギーをボールに伝え、速度と回転に反映させる際、ガットが直接的に影響を与えます。

Wilsonなど一部ラケットメーカーが「ガットとボールが接触する際、ガットがズレることでボールにひっかかり回転がかかる」という説明をしています。

ガットのズレの大きさや張ってあるガットの本数の違いがどの程度回転に影響を与るかは分かりませんが

「ガットとボールが接触する際、ラケットの縦糸・横糸が、飛び・方向性・回転に影響を与えている、決定付けている」

というのは言える気がします。

スイング軌道とガットの角度

例えば、下図のような当たり方で、ラケットの中心線が地面と水平を保ったまま、ラケットが上方向に進んで行けば、縦糸は上端から下端まで最大限稼働する事ができます。

ガットが+++の状態でボールにひっかかる

ガットがボールのひっかかる角度

インパクト時に縦糸がボールにひっかかるのはイメージできるでしょう。 

 

逆に、下図のような当たり方、ラケットヘッド側が下がり、ラケットの中心線が斜めになった状態で当たったらどうでしょうか?

ガットが×××の状態でボールに当たる

板面で持ち上げるようなインパクト

クロスした状態の縦糸・横糸がお互いの動きを相殺しあってしまい、ガットはほぼ動かず板版で打っているような当たりになるでしょう。 

板面で打つような当たり方

これらの事から

「ボールがガットにひっかかりやすい、ガットが最大限稼働する状態は、スイング軌道・方向に対し、縦糸・横糸が90度に向いている状態だ」 

と考えます。

トップスピンやスライス、サーブにおける回転をかける場合に限らず、スマッシュやボレーを打つ際にフカしてオーバーしないよう「ボールを抑えるように打つ」場合もあります。いずれも

「縦糸・横糸がどうインパクト面で関与しているか」

という認識、イメージしつつ打つことが大事です。

それが「ラケットがどっちを向いているか」以外の「インパクト面を作るという事」でもあるでしょう。

「下から上に振る」&「ワイパースイング」におけるガットの角度

トップスピンをかける手段としては、

「ボールの下から上方向にラケットが通過するように接触する (ボールの下から上に振る)」 

ボールの下から上にラケットを振る

「腕を捻る・内側に巻き込むように曲げるなどして、手に持ったラケットのグリップ側を軸にヘッド側を上に引き上げていく、いわゆるワイパースイング」 

ワイパースイング

等が言われますがいずれも

「スイングする方向・角度に対してボールと縦糸がキレイに当たり、ガットの稼働が最大限機能する状態 (インパクト面の向き、角度) を想定できていなければ、ガットがボールにひっかかりスピンがかかるという効果が十分生まれない」

という事が言えると思います。

上で述べた角度の問題もありますが、そもそもインパクト前後でラケット面がグリグリ方向を変えていては望む結果は生まれにくいはずです。

ワイパースイング補足

ワイパースイングは円軌道の回転軸に対し縦糸がボールにひっかかります。その点では縦糸の稼働とボールの関係は満たしています。

ワイパースイング時にガットがボールにひっかかる

ただ、ラケットはスイングにより速度を得、運動エネルギーを持ち、そのエネルギーがボールに伝わる事でボール速度と回転に反映されます。

大きさは『1/2 x ラケット重量 x ラケット速度 ^2 (2乗)』で計算されます。

“我々がスイングを行う主たる目的はボールを前方向に飛ばすため” ですから、回転をかけようと上方向にラケット面を持ち上げるだけのワイパースイングでは目的からはズレてしまいいます。

昔、ワイパースイングが広まった頃、肘から腕を巻き込むようなスイングをすると言わたりしましたが、それだと回転はかかっているように見ても飛んでいく速度が極端に遅く、”前に飛んでいきにくい” ボールになります。

現代のトッププロ選手のスイングを見れば、ラケットを前に強く振る中で速度を落とさずラケットヘッド側を持ち上げる工夫をしています。 テニスは進化しているのです。

前に強く振る中でラケット面を持ち上げ回転をかける

知識のアップデート無しに「トップスピンをかけるにはワイパースイングだ」と考えてしまうのは昔っぽいテニスの認識という感じです。

インパクト面の角度、打ち出す角度など

よく「インパクトでラケット面は地面と垂直」と言われますが、正しくは「ボールを打ち出す方向・角度の真後ろからラケット面を90度に当てる」だと思います。

ボールを打ち出す方向・角度の真後ろから90度のラケット面で当てる

この事はボールを真上に突く動作をする際、ラケット面を真上に向けない人は居ない事でも分かります。

では、何故「インパクトでラケット面を地面と垂直にする」と言われるのか?

計算上、ベースライン中央、地上から80cmの打点からネット中央の2倍の高さ(約180cm)を通すための打ち出し角度は水平+約5度です。

ストロークの打ち出し角度は水平+αでしかない

単純な例ですが、“水平+5度上向きの打ち出し角度に対し90度” にラケット面を向けたインパクトをしていれば周りからは

『ラケット面は地面と垂直に見える』

という事だと思います。 

フラットロブを上げるなら打ち出したい方向・角度に対し真後ろから90度で当てれば良いです。 

片手打ちバックハンドで言われる「打点を前に取れ」

片手打ちバックハンドの指導では必ず「打点を前に取れ」と言われます。

片手打ちバックハンドは打点を前に取れ

これは、ラケット面で飛んでくるボールの運動エネルギーを反発させるためには、利き腕肩が体の前側にあり、足や体の力も使い、腕、手、ラケットで後方から押し支える形が望ましいため、そこから来ているのだと思います。 

身体の前で押し支える

手や腕が利き腕肩よりも内側 (体の中心に近い) に入ってしまと押し支える力が極端に弱くなります。

片手打ちバックハンドで打点が近いと喰い込まれる

打点を前に取る理由として「ボールに打ち負けるから」とよく言われますね。

ただ、この説明はボレーのような止めたラケットでボールを押し支える、反発させる事からの発想で、スイングしている事をあまり想定していないように感じます。

スイングによりラケット速度を出し運動エネルギーを発生させる。それをボールに伝える事でボール速度と回転を生む訳ですが、飛んでくるボール自体も速度があり運動エネルギーを持っています。

スイングしないラケット面で飛んでくるボールのエネルギーを反発させ、そのエネルギー量の範囲内で飛ばす。それがボレーの基本になります。ネットに近い位置、ボールの速度も速いからスイングせず正確に当てる事に集約した選択です。

ボレー

逆にベースライン付近から打つ場合は距離も遠い、ボールの速度も落ちているので自分からスイングしボールに飛んでいくエネルギーを与える必要があります。

『押し支えるだけ』では不十分なのです。

打点で止めるイメージなのですから、打点の位置で当てるイメージを持ちやすいのは分かります。

ボールとラケットのインパクト、打点は”空中の一点”ではない

ラケットとボールが接触するインパクトの時間は0.003~0.005秒と言われています。

打てば分かる通り、ラケットがボールに当たってもスイングが止まる、極端に減速する事はないですね。

仮にインパクトの長さを0.004秒、インパクト前後のラケット速度を120km/hとするなら、ラケットとボールが接触し、ボールが潰れ、復元しつつ、離れて飛んでいくまで、ボールとラケットは13cm程も “接触した状態で” 同じ方向に前進している 計算になります。

インパクトでボールとラケットは接触したまま10cm以上前進する

つまり、

我々が教わる打点、

『空中の一点にラケット面を差し伸べて「ここが打点の位置ですよ」と言う説明はあくまで”イメージを持たせる手段”であり、現実とは少し違う。』

ということです。

ただ、教わるまま、皆がそれを “当たり前の事” だと考えています。

ボールは10cm強の幅の中で捉えていると考えれば…

打点を空中の一点ではなく、スイング中の一部、13cm程の幅(ゾーン)で捉えていると考えると”インパクトに対する認識”が変わってきます。

13cmの幅で接触する中、ラケット面があちこち向いてしまったら自分が思う方向にまともに飛ぶはずがないですよね。

人の反応速度は0.2~0.3秒だそうです。

インパクトを人が認識し操作する事はできません。

自身でインパクトを認識し操作できない以上、安定してボールを打つには、インパクトを含む一定時間と一定距離、例えば30~50cm位は、ラケット面が打ち出したい方向・角度にずっと向き続けている事が必要となってくるかと思います。

我々よりも速くラケットを振るプロ選手なら尚更です。

スイングを見れば、あれだけ速く振っていても、インパクト前後のラケット面の向きは同じ方向を向き続けているのが分かります。

そう考えると

「片手打ちバックハンドのインパクトを空中の一点でボールを押し支えるイメージで考えるのは”スイングの事を想定していない”。ラケットを速く振って前に強くボールを飛ばす、回転をかけるという方向に十分思考が向いていないのでは?」

という気がするのです。

打つ所からスタートできる両手打ち、入り口に立つ事自体が難しい片手打ち

人の腕の関節(肩・肘・手首・指)は肩の外側から内側にかけて多く柔軟に曲がるという特性上、非利き手のサポートを使えるのが両手打ちバックハンドです。両手バックは非利き手のフォアの要領でと言われます。

逆に、肩と手首しか外側に曲がらない、腕を外側に向けて動かしボールを捉えるという慣れない動作と感覚が必要なのが片手打ちバックハンドです。

腕の各関節 腕の関節は内側に柔軟に多く曲がる 腕の関節は外側に向けては柔軟に曲がらない

『両手打ちバックハンドはとりあえずラケットをボールに当てるという所から始められる』

のに対し、

『片手打ちバックハンドはその入口にすら立てない』

という違いがある訳です。

入り口に立ててない以上、上達も何もありません。

片手打ちバックハンドでボールを打つ感覚を自覚するため、ボールを飛ばす回転をかけるという先の段階より、まずはボールを捉える感覚を優先させた教え方。それが「打点を前に取る」という説明に現れているのかなと考えます。

自身の工夫により自力でその入り口に立つ事ができ、その後、フォアと変わらない位、片手でバックハンドが打てる段階まで達した方ならもっと先の事に目を向けられるでしょう。

片手打ちバックハンドで強くボールを飛ばせない人の特徴

初心者を含む、片手打ちバックハンドでボールを強く飛ばせない人の特徴として

「打点の位置に差し出したラケット面でボールを前に押し出そうとしている」

という事があります。

片手打ちバックハンドの打点

体が開かないように両手を広げる、肩甲骨を引き寄せるようにしてバランスを取れと言われたりしますね。

両腕を広げるようなスイング・フォロースルー

打点にラケットを差し出していては “速度はゼロ” に近く、ボールを飛ばす・回転をかけるエネルギーもほぼない状態です。

前述したようにテニスの指導では「打点は空中の一点」という前提ですから、打点を確認させる、イメージさせるのは分かります。片手打ちバックハンドが打点でボールを捉えるイメージが持ちにくいのもあります。

ただ、インパクトのイメージをもたせた後も、打点の形を基準にインパクトでラケット速度が出せない打ち方をやらせるのは無駄だと思います。

この打ち方ではボールと当たる打点位置より先にまっすぐ前にはほぼ押せません。すぐに上や横にラケットはズレ、ボールに向かっていたラケット面もヘッド側が前に出て向きが変わってしまいます。腕を前方に伸ばしきる前後から以降の動きでまっすぐ飛ばしづらいのはなんとなくでも分かりますね。

スイング軌道のイメージの違い

スイングによりラケットの運動エネルギーを高めてもボールに影響を与えられる事ができるのはインパクトの0.003~0.005秒の間だけです。インパクト前、インパクト後にいくらラケットを動かしてもボールに影響を与える事はできません。

当たり前のようですがこの点が曖昧なままボールを打っている方は多いです。

「インパクトに集中しろ」「フォロースルーを大きくしっかり取れ」と言った助言はよく聞きますね。当たる時、当たった後の話です。

逆に、テイクバック位置からの振り始めからインパクトまでのスイングに対するアドバイスはあまり聞かないと思います。

前述の「打点は空中の一点ではない」という話も関わってきます。

ラケットの運動エネルギーは “インパクト時のラケット速度” で決まると書きました。

テイクバックから振り始めにおいてラケットは停止しており、誰もが分かるようにその速度はゼロです。

そこからインパクト位置まで短い距離で瞬間的にラケットを加速、インパクト前後で最高速になるのが理想です。

前にラケットを振って飛ばそうと考える方のスイングイメージはこんな感じです。

打点から腕を伸ばすようにしてボールを飛ばす

打点の位置、インパクトの形、フォロースルーをどう取るか等。“打点点付近まではなんとなくラケットを近づけていって” 当たった後に大きく振って飛ばそうといった意識でしょうか。

これだとボールを打つ事、ボールに当てる事だけ考えておりインパクトまでどうやってスイングしているかの認識が抜けています。

例えば、インパクト前後に最高速までラケットを加速させると考えればこういったスイングになるでしょうか。

インパクトまでの加速を重視した片手打ちバックハンド

フォアハンドもバックハンドもストロークにおける初期加速を生むのは足で地面を踏んで得られる反力と身体のねじり戻し等を連動させて得られる腕に持つ物に前進するエネルギーを与えようとする動きです。

腕の力で前に押し出そうとしてもインパクトの瞬間ボールはラケットから離れていってしまいます。

 

さて、大まかに特徴を上げると

・しっかり後方でテイクバックを取る。(なんとなく引いてボールに近づけるスイングではなく)

・振り始めからインパクトまでの距離を取り、ラケットを瞬間的に加速させる。

・テイクバックからの軽い捻り戻しをしつつ体は前に進んでいくが右足で踏み支え体の前進を抑える。

・体の軸が前に流れて動いていってしまわないようにやや軸足(左足)側に残した状態。

・体と腕の動き、軸足で地面を踏む反力等を組み合わせラケットは加速しているが、体が止まる事でラケットが体の位置を追い越して右肩よりも前に出ていく。

・ラケットが身体を追い越す事でラケット面を後から押し支える形、飛んでくるボールのエネルギーを押し支える形になる。

・同時にラケットを最高速でボールに接触させることができる。

・姿勢を下げている事で地面を踏み、下から上にラケットを加速させられ、肩支点でラケット軌道も自然と持ち上げっていく。

といった具合です。   

tennis backhand

tennis backhand tennis backhand

バックハンド側は腕が柔軟に曲がらない、利き腕肩の位置が最初から前にある (フォアは一旦下げて前側に戻す) といった制約から、 フォアほど曖昧にボールが打てないので、打点の高さや身体から遠い場合等は状況に応じた工夫が必要にはなります。

ただ、基本としてのこのような打ち方とその応用という区別はフォアも同様です。

どうやったらこういう打ち方になるのか考え、現代のトッププロのスイングを繰り返し見比べる事でスクール等では教われない自分が上達するための知識、入り口に立つための知識が蓄積されます。

教われない以上自分で考える。

自分を上達させるのはコーチや周りの人ではなく自分自身。

それは片手打ちバックハンドに限りません。

“手の甲側で打つ”イメージと”手の平側で取る”イメージの違い

片手打ちバックハンドでボールを打つ際に多くの方が持つイメージは “手の甲側をボールに当てる” というものだと思います。

片手打ちバックハンド 手の甲側でボールを捉えるイメージ1

片手打ちバックハンド 手の甲側でボールを捉えるイメージ2

片手打ちならバックハンドスライスも練習するでしょうが、スライスはまさに甲側で打つイメージですね。手の甲側から、スライスなら上から下、スピンなら下から上に当てる感じです。

この「手の甲側をボールに当てるイメージ」は野球等の経験も大きいようです。

以下はメジャー流のボールの打ち方を説明した動画です。

日本ではバットを握る際の前側の手 (左打者なら右手) の使い方は『手の甲側で打つイメージ』を持たせられますが、メジャー(米国)での指導は『手を返した手の平側でキャッチするイメージ』という事です。

メジャー挑戦した日本人野手に教わるアメリカで主流のバッティング

日本ではバットでボールを打つ経験を持つ男性は多く、 片手打ちバックハンドを希望するのも殆どが男性ですね。甲側を基準に考えるのは必然かもしれません。

野球で言う逆シングルのように “返した手の平側でボールを取るイメージ” だとこうなります。

片手打ちバックハンド 手の平側でボールをチャッチするイメージ

動画の中で説明されている根鈴雄次さんは

「手の甲側打つイメージはボールを捉える一点の速度は速いだろうが、 野球では一点でボールを捉える事は困難。スイングしている全体の速度が均一化されている方が対応の幅が広がる。点ではなく線で捉えるということ」

とおっしゃっています。

バットという道具を手に持ちスイングしてボールを飛ばす点でバッティングとストロークは共通点がある訳で、前述した「打点は空中の一点ではなく13cm程の幅(ゾーン)でボールを捉えている」という内容とも繋がってくると考えます。

根鈴さんのおっしゃる事を借りるなら、片手打ちバックハンドでも甲側で打つイメージを使うケースは、高い打点で捉える場合、 バックハンドリターンをする場合など、スイングの中でボールを捉えるというより、ボールを捉える位置 (スイングの中で捉えるのではないからこれは”打点”と言うのが合うのかも) を強く意識したパチンとその一点に力を集中させないといけないような場面。或いは打点から水平方向に振り払う様にスイングする(フカサないようにラケット面で上から抑えるように)場合等で用いると思います。

逆シングルのように返した手の平でボールをキャッチするイメージで打つということは身体の近い位置でボールを取るという事。

打点を前に取るという話とは少し違ってきますね。

ハーフバウンドのようなボールを姿勢を落として打つ、ボールを低い位置から持ち上げると考えればこういうイメージの方が合っているでしょう。

ボールを打つ位置が身体に近い (と言っても、身体・利き腕肩よりもネット側で捉えるという点は変わらない。身体から離れた後方から押し支えるような前ではないという意味で) という事はテイクバックの速度ゼロから自身で加速させてきたラケット速度が保たれた段階でボールを捉えやすいという事でもあると思います。

ラケット加速は身体の捻り戻し、足で地面を踏む反力、腕に引き等が連動してテイクバックの速度ゼロから瞬間的に加速させてくるので、腕が身体を追い越す辺りからこれらの要素がなくなります。つまり、加速度が収まり、速度は低下に向かうという事。

フォロースルーを強く振るというのは速度低下を抑える意識付けですがボールが離れてしまった後にいくら振っても影響は与えられません。

やはり大事なのは”インパクトまで”、そして”どこでインパクトするか”です。

ディミトロフ選手のラリー練習

かなり速いテンポで、バウンドが頂点を迎える前にボールを捉えていますね。 

ボールを捉える位置も身体から遠くない位置で、十分な姿勢でボールに力を伝えられる打ち方だと思います。 

片手打ちバックハンドでワイパースイング?

腕の関節の可動がフォア側程柔軟ではないものの、片手打ちバックハンドでもワイパースイングに相当するものでトップスピンをかけるという話があります。

インパクト前後で上腕を外旋、前腕を回外方向に捻り、手首を回転させるようにしてラケット面を上に持ち上げようとするものです。(ドアノブを小指側に捻って回るような動き)

片手打ちバックハンドでのワイパースイング

外旋・内旋

回外・回内

ただ、プロ選手を見てもこういった動作を積極的には使っていません。 

フォアハンドでも昔のような腕を内側に引き起こすようなワイパースイングをするプロ選手は皆無になり、ボールを飛ばすためにラケットを打ち出したい方向・角度、つまり「前に向かって強くスイングする」過程の中で無理なくラケットを引き起こす工夫をしています。

道具も進化しボール速度も上がりましたし、スイング(前)とラケットを引き起こす(上)のベクトルの違いをうまく吸収し両方を高いレベルで活かすための必然的な進化です。

片手打ちバックハンドの両手打ちバックハンドに対する優位点の一つは”ラケット速度の速さ”でありそれを活かしたスピンのかけ方の方が妥当です。

上の図のようなワイパースイングでスピンをかけるというのはトリックショットの類、基本ができた上で、遊びでやるようなものです。

※ガスケ選手はこういう腕の使い方をよくします。片手打ちバックハンドの他選手よりもスピン量が多く角度が狙える特徴はこれが関係していると想像します。ただ、他選手が “できるけど積極的には使わない” 意味が大事でしょう。

ネットの低い位置から持ち上げる場合は?

ネット側の低い位置からボールを持ち上げてネットを越す、短い距離でスピンを多くかける必要がある場合も、ガットの向きとスイング軌道、ボールとの関係性を意識しつつ、ガットにボールがひっかかりやすい状態でラケットを上方向に持ち上げられれば十分スピンはかけられます。(姿勢を落とし膝の柔らかさを使えばより持ち上げやすい。)

片手打ちバックハンド スピンがかかりやすい要件

片手打ちバックハンド スピンがかかりやすい要件

前述したように腰から胸位の高さのボールをストロークで打つ際、ボールが接触した際にズレ、ボールを持ち上げる、回転をかける際に作用するのはガットの縦糸で、スイング方向と縦糸・横糸の関係が『+』の角度になる状態が縦糸が最も大きく稼働でき、ボールに影響を与える事が出来ます。

ガットの縦糸がボールの飛びや回転に影響する

単純に言えば「ボールを捉える打点の高さ = グリップの高さ =手の高さとなる」となるのが分かるでしょうか?  

もちろん、スイングしていく角度によって縦糸・横糸が機能しやすい角度は変わってきますが、打点の位置からまっすぐボールを飛ばしたい場合はこれが安定してボールを飛ばす、きれいに回転をかける目安になりそうです。

だから、ネットに近い低い位置からネットを越したい、ネットを越すように持ち上げたいような場合も、腰高のまま腕を下げ、ラケットを下げるより、打ち方は変えずに姿勢を落として手の位置 = グリップの位置 = 打点の位置を下げる方がスイング角度が急にななず確実性が高くなると思います。(腕を下げると腕を振り上げる動きになりスイング角度が急になる。確実性が下がる感じです。)

もちろん、地面に近いボールとなると大変でしょうが、この点を理解しておくと腕を下げても手首の角度を保ってラケット面を持ち上げられるようになります。

スライス面で拾うだけか、スピンで打てる選択肢も持っているかの違いは大きいでしょう。

最初はミニラリー等で短い距離でゆっくりとしたスイングの中でガットにボールが噛む感触、スピンがかかる感覚を練習するのが良いと思います。

ゴリっと擦り上げるのではなく、厚く当てる中でガットを下側にズラしてボールの下側を持ち上げる感じでしょうか。飛ばす距離が長くなり、ラケット速度が速くなってもその関係性は変わりません。

まずは適度にスピンがかかったボールを思った方向にまっすぐ飛ばせる事を目指したいです。ボールを打つ入り口に立ててもいないのにプロの打ち方を見た目だけマネてラケットを振り回すのは無理があります。

初心者の頃、フォアを打つ際、ラケットを強く振り回しても満足に飛ばせなかったはずです。速度よりもまずコントロール。そのためには力まず、スムーズで無理のない身体の使い方をする事。それはどのショットも変わりません。

ラケットはできるだけまっすぐ振る

身体を回転させて打つのはボールの飛びとは別の事柄

フォアもバックもスイングにおいて身体を回転させる動作を伴います。

フォアハンド

バックハンド

フォア程でなくてもバック側も横向きのまま腕の曲げ伸ばしだけでボールを打つのでは、ボールを強く飛ばすためのラケット加速には不十分です。

ここで

「身体を強く回転させれば、強いボールを打つのだ」

といった思考が生まれますが、それはラケットを振る人間側からの思考です。

ボールを飛ばし回転をかけるのに使わるラケットの運動エネルギーは

『1/2 x ラケット重量 x (インパクト時の)ラケット速度 ^2 (2乗)』

で決まります。

仮にですが、重量変わらずラケットにジェットエンジンのようなものが搭載されているとして、打点付近にラケットをセットした後、ボタンひとつで一気に150km/hといった事が起きるとします。

ラケットにジェットエンジンが付いていたら

この場合、我々が一生懸命行っている“スイング”は不要になりますね。

我々は「自分がボールを打つ事」しか考えていませんが「ボールが飛び回転がかかるのは物理現象でしかない」ですから、同じ条件が整えうのなら、Aさんも、Bさんも、Cさんも同じ速度、同じ回転のボールが “理屈上” 打てる事になります。(実際にはありませんが。)

ボールを打つ動作だけでなく、ボールがどう影響を受けて飛んでいくのかという視点がテニスの理解を深めるのだろうと思います。

日々、コート上でたくさんボールを打ち続けていても「なぜボールは飛んでいくのか」と考える機会はなかなかありません。

上達は理解の先に存在し、人は自分の知識の範囲でしか理解ができません。理解を深めるには考える事、知識を増やす事が必要でしょう。

今回は『片手打ちバックハンドはどうやって打てばよいのか』という個々の打ち方の話までは触れませんが (自分の打ち方を常日頃見ているコーチに教わるべきですし)、加速させたラケット速度を落とさず、正確に当てる、ガットを最大限稼働させるといった『打ち方』ではない要素、ボールを飛ばし回転をかけるという要素から考える事も片手打ちバックハンドの入り口に立つ、その先を目指すのに必要な認識ではないかと思います。

ラケットを強く振ってボールを飛ばそう、インパクトでボールを強く打とう、回転をかけようとインパクト前後でラケット面があちこち向いたり、ヘッド側が前や上にブレてしまう方はよく見かけます。(打点は”空中の一点”ではなく10cm強の幅で捉えているからまともに飛ぶはずがない)

一旦下げた利き腕方を前に戻しながら打つ、腕の関節が柔軟に曲がる、打点の調整が効きやすいフォア側と違い、片手打ちバックハンドでは利き腕肩の位置が身体の前側で固定、それがスイングの軸になります。

打点を前に取れと言われるので腕を前に差し伸ばすような位置でボールを捉える事で、腕はそれ以上前に伸ばせず、肘も伸びているので、後は腕を持ち上げるか、横にはらうか、まさにボールを点で捉える、点で押している状況です。ちょっとでもイメージと球速やバウンドが違ったらインパクト面が狂ってしまいます。

インパクト前後のラケット面のブレがフォア以上に顕著に“当たりの悪さ”“思った方向に飛ばせない”“変な回転がかかる”に直結します。イメージ通りに打てない方はこの辺が関係すると思います。

身体の使い方を考え、それが合っていればスムーズでしっかりとしたスイングと正確なインパクトは共存できます。それは強く打つ、速く振ると考える事とは少し違うでしょう。

十数年ですが、ずっと片手打ちバックハンドについて考えてきて、片手打ちバックハンドが両手打ちバックハンドよりも劣っているという言う点は世間で言われる程ないと感じています。トッププロが打つような現代的な片手打ちバックハンドならです。

多くの方が”その入口”に立てるようになればいいなと思います。

当然、両手打ちバックハンドの”打つ所から”始めてそれ以降の時間を上達に使う判断も有りです。ただ、両手打ちを選んだからといってフォアと変わらずバックを打ち合えるようになるのは両手打ちも片手打ちも変わらない、いずれも難しさがあると思います。

テニス トッププレーヤー ベストショット2018 (B.B.MOOK(テニスマガジン EXTRA))
ベースボール・マガジン社
¥2,277(2024/03/27 22:11時点)
大人気シリーズのMOOK第6弾が3年ぶりに復活! 全テニスプレーヤー共通の基本がココにある!
テニス スピードマスター (勝利への近道!)
新星出版社
¥1,430(2024/03/28 03:37時点)
ひと目でわかる、スーパースロー写真を満載。確実にうまくなるコツがビジュアルでわかる!