lond日記

思ったことを気まぐれに書きます。

テニスセンサーの進化から考える我々のテニスの未来は? (テニス)

ヘッドの新しいテニスセンサー

ここ2回、ラフィノさんのYouTubeチャンネルでヘッドの新しいテニスセンサーの試用動画が載っています。

HEAD専用テニスセンサー!!(ストローク編)

 HEAD専用テニスセンサー!!(サーブ編)

ヘッドは他ラケットメーカー同様、ソニーのスマートテニスセンサーに対応させる形で利用可能だったのですがここに来てZEPPと提携して独自のテニスセンサーを発売した流れです。

ZEPPとは?

ZEPPはゴルフや野球、テニス用のセンサー機器を以前から発売していたのですが、色・デザイン共にかなりかっこ悪く(下写真)、通販サイトで目にはするけど全く目立っていない印象でした。

ZEPPはブランド名で会社名はHuami (華米) と言います。

www.zepp.com

この会社は、近年スマートフォンでシェアを上げてきている中国 Xiaomi (小米・シャオミ) 社のウェアブルデバイス関連のサブブランドのようです。(子会社みたいなもの)

写真のコスト面から部品ありきでやっつけのようなデザインにする感じ、やっぱり中国企業か...という感じはします。(苦笑)

 

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でも、ヘッドのテニスセンサーはソニー製よりかなり進化している

動画の説明を見た限り、製品付属のエンドキャップと同一形状で同一重量のためバランス等変わらない。(プラスチック部品で7gなので対象となるラケット新モデルからキャップ重量を重く設計したのかなと推測)

取り付けた状態のまま充電可能で、充電コードもマグネット式で抜き差し不要

アプリで見られる情報を見ても従来のソニーやバボラのテニスセンサーに比べて項目や見られる情報の種類も質も良くなっているのが一目瞭然です。

ソニーのスマートセンサーが発売されたのは2014年です。

4~5年前のスマホと2018年現在のスマホを考えてもその進化は考えるまでもないです。

手軽に買い換えるような製品ではないとは言え、なかなか販売を伸ばせずズルズルと製品を引っ張ってきているソニーに問題があります。(ソニー自身、スマホなら年1-2回のペースで新製品を出している訳なので)

前述したようにZEPPは世界的に見ても高いシェアを持つXiaomi (小米) 社の関連ブランド。同社はスマホOSもカスタマイズしたAndroid OSを使う位の技術力の高さを持ちます。最新のセンサー機器とそれを使うアプリ開発技術、2014年のハード前提でテコ入れもしないソニー製品との差は4年という年月以上に大きく感じるのは当然と言えます。

ソニーは(国内他社も同様ですが)、4Kビデオカメラ、ウェラブルカメラ等の分野の製品では新機能がない製品を新製品として出したり、或いは新製品を全く出さなかったりです。(4KビデオカメラはニーズがありソニーがNo.1。競合はパナソニックしかない)

私はソニーがスマートセンサーをリニューアルする事は80%位無いと思っています。経営判断で組織が整理されたらそこで終わり?という感じでしょうか。

Xiaomi (小米) 社もスマホ市場での伸張も停滞気味。ウェラブル分野も拡大させていきたいでしょうからチャンスです。(既にウェラブルデバイスでは世界No.1だそうですが。) ヘッドがXiaomi (小米) 社と手を組んだのは状況的に見て必然とも言えるのです。

殆どのラケットメーカーは海外企業ですし、生産を中国でやっていない企業もごく僅かです。

 

日本でもNo.1ラケットブランドと言えるであろうWisonを販売するアメアスポーツ社ですが近々中国企業に買収されるだろうと言われています。(まさに今大詰めらしい)

www.bloomberg.co.jp

Wilsonが中国企業になったらZEPPに切り替える可能性もあるでしょう。

 

バボラは自社ブランドのテニスセンサーを出していますが、フランス企業なのでフランスにあるセンサー企業(本社はスイスかな)と提携してPOPという手首に巻く新製品を出しました。

スリクソンやプリンスはどうするでしょうか?

ヨネックスは日本ブランドを標榜しているのでソニー陣営に最後まで残るかもしれませんが。

テニスセンサー及びその進化がテニス指導の限界を示している気がする

テニスセンサー機器を使ったことがある人なら分かると思いますが、

イベントでの製品デモ等で、

「このようにボールを打った際のボール速度、回転数、当たった位置、打った回数等が分かります」

とスマホ画面を見せられて

「へぇ。役に立ちそうだ」

と思いますが、実際、購入してみても継続して使わなくなってしまったり、使ってはいるけどデータが溜まる一方でイマイチ使いこなせてないという感じでしょう。(こういう風に使いこなしている。上達に役立てているという方が居たらすいませんが、そういう話は聞いたことがないので。)

先日もラフィノさんのチャンネルでテニスセンサーを使ってラケットの違いをデータから見てみようという企画がありました。

今回のロングはちょっと違う!?(CX200 vs CX200プラス)

過去にも「テニスセンサーのデータから各自のテニスを分析しましょう」みたいな動画がいくつかありましたが、見るたびにテニスセンサーを使うという提案の限界を露呈していると感じてしまいます。

「このラケットに変えるとスイング速度が3%上がっていますね。」みたいな話。

平均3%は100km/hのスイングなら3km/hですが無意識に加減している可能性もある程度の違いかもしれません。

ラケットを使いボールを打つというとても "感覚的な 事をデータを使って説明、根拠付けするには数値を使う側に知識やノウハウが必要だと思います。それこそスポーツ科学の専門家でも試行錯誤していかないと難しいレベル、テニスやガジェットに詳しいのとはジャンルが違います。 

宣伝と考えてもデータを使う事で逆に胡散臭くなるので「私が打った感覚では新製品の方が楽に飛ばせる」みたいな個人の感想の方が参考になりそうと思うのは私だけでしょうか?

感覚でやっていたものにデータを導入するという事は?

今まで社長の長年の経験や勘で商品を仕入れていた会社が、それじゃぁダメだと会計・営業・在庫システム導入しました。

「こういうデータと傾向が分かります。」

「なるほど分かった。で、我々はどうすれば良いの?」

「それは自分で考えてください」

となるのは想像できます。(決算等、経理の円滑化等の効果も当然ありますが)

それまで感覚で成り立っていた環境にデータを持ち込んでも

『感覚とデータを結びつける手法』

『データをどう改善に結びつけるかという手法』

が無ければ片手落ち。「へぇ。」で終わってしまいます。

ソニーのスマートテニスセンサーが発売されて以降、導入してレッスンに使っていくと発表したテニススクールもありましたが、そういった話が広まっていかないのは当然でしょうね。(導入発表したスクールも宣伝効果を期待してのもので今は使っていないかも。)

コーチがそれまで自分自身、或いはスクールとして、コーチという職業全体で培ってきた教え方は、経験や伝聞ベースできちんと定型化されているようで数値化できないものです。ボールを打つ際のデータが数値で見られるようになったとしても教える側としてそれをどう、今まで長年続けられてきた「テニスの指導」に組み込んでいけば良いのか誰もわかりません。

テニスセンサーのよい利用事例があれば、それをマネする事で "指導の場での体裁" は整うでしょうが、他所がやっていないことを率先してやりマネされて成果だけ取られる愚はどこもやらないですよね。他もやっていないのだから今のままでも困らないし。

コーチ自身も「コーチはそう言いますけど、テニスセンサーのデータでは全く逆の事を示してますよ」みたいな事を言われるのは怖いと思われているのではないでしょうか。

データを取ってそれを使うという事はやり方自体が進化しないと期待する効果は出ないので、データを取る仕組みを入れる事より、やり方をどう進化させるのかが先にあるべきです。

現状テニスセンサーを指導に使うのは

昔から行われてきた映像を撮影して確認するのと全く変わっていない

です。見て「なるほど」と思うだけでしょう。

言い方は悪いですが『良い悪いではなくコーチが自分が伝えたいことを納得させる根拠に使われてしまう』という事も起きえますね。(ビジネスの世界でも都合の良い情報でお客さんを納得させるという"些細な悪用"は普通に行われます。)

 

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こういう未来がなければテニスの上達はずっと今のまま?

コーチとしてはテニスの指導に数値が導入されてしまう事に対する不安はあるでしょうが、現状では「自分が培ってきた経験が無駄になるはずがない。そんな未来はすぐには来ないはず。」と思われていると想像します。

テニスビジネスは、指導はスクールというパッケージ、販売と張り替えはショップというパッケージが出来上がっています。ラケット・ストリングメーカーもこれらに乗っていて、持ちつ持たれつのよくある商売の構図ですが、市場としては縮小方向、それを錦織人気、大阪人気の他力本懐で引っ張りたい感じです。

それまで成立していた市場を根底から覆し滅ぼしてしまう存在は最近だと海外から来たりしますね。iPhoneに滅ぼされたガラケーメーカー、Amazonに駆逐されつつある本業界等。誰もやらない事をやってそれをバカにしていた既存のプレイヤーは巻き返しすらできないまま"完全に消滅" します。

我々はテニススクールに上達を期待して通う訳ですが『教わる関係なくすべて自分次第』な点は英会話スクール等と変わりません。(私はテニススクールを "テニスを教わる所" と考えるより "整備されたコート、沢山のボール、コーチ含む練習相手を自分が好きな時間帯で確保できるコート利用権" と考える方がしっくりきます。)

今のテニススクールは昔から変わらない「期待される内容と実体がズレた状態のまま、利用者側にそれを納得させている」感じです。

少し言い過ぎでしょうか。

でも、私は

「ボールと打つ相手が確保できるコート利用権」という売り方をしても良いのでは?

と思います。

想像でしかないですが、昔からある「ローンテニスクラブの会員権」はそういう意味合いを持っているのではないでしょうか。

メジャーリーグのスタットシステム

米国のプロ野球であるメジャーリーグでは『スタットキャスト』というシステムが導入され、各球場に設置された複数台のカメラやレーダーで選手やボールの動きを高速に分析できるようになっています。

news.mynavi.jp

メジャーリーグでは近年「フライボール革命」というものが起き、ホームラン数が急激に増加しています。

全試合、全選手のボールデータが分析されることで「バレル (Barrel)」という指標が導きだされ、打率・長打率が高い選手はその数値の範囲内でボールを打っていると分かりました。打球速度158km/h以上で特定の角度にボールを打ち出すとホームランになる確率が高いという内容です。

「ホームランか三振か」「ヒットの延長線上がホームランだ」「フライを打つな。ゴロを転がす方がアウトになる確率が低い」といった通説をデータが完全に打ち破り、現在、メジャーリーグでは「うまくフライを上げる事を目指す」のが新しい通説になっています。

メジャー選手のスイング速度がないと無理という訳ではなく、分析によると日本のプロ野球で1軍に在籍するほぼ全員が達成可能なボール速度だと聞きました。

データがそれまでのスポーツのあり方を大きく変える例の一つだと思います。

NBAの3Dリプレイ

米国バスケットのNBAでは、テレビ中継中に360度どこからでも3D映像をリプレイできる機能をイベントや一部試合で導入していますし、ゴール裏にGo Pro等の3DVRカメラを設置してシュートを3Dで見らるのは当たり前になっています。

Crazy 360 FreeD Angles from the 2016 Slam Dunk Contest

VR機器はプレイステーションVRのように専用のHMDが必要な事もあり一般的な視聴方法とまでは認識されていませんが、Oculus Go等のコードが無いスタンドアロン型でスペックを絞った安価な製品も出てきているので、TVで見る代わりにHMDでVRを見るというスタイルは今後普通のことになっていくと思います。

NHKが4K、8K放送を始めますが、既存の4Kテレビにはこれを受信する事ができません。DVDの解像度は横720×縦480ピクセル。DVDよりキレイと言われるBlu-rayは地デジと同等の1920×1080ピクセルです。

我々が地デジやBlu-ray以上の解像度で映像を見ようと思ったらNetflixやAmazon Prime等の配信サービスに行くのが妥当で、VRもその流れの上にあります。TVでの4Kは、Blu-rayの上位メディアが登場しないのと同様このまま普及しないかもしれません。

テニスの現状 

テニスでも大会によってVR映像の撮影がされ一部配信されたりもしています。

Wimbledon - NextVR

ただ、コートに複数台のカメラやレーダーを置き、選手がボールを打つデータをリアルタイムに収集、分析したりするのは難しいでしょう。ITF / ATP /WTAの管理組織、大会運営、使用コート、個人である選手など、メジャーリーグとは実現可能な条件が整っていません。

各ラケットメーカーやトップクラスの選手も「トラックマン (軍事レーダー技術でボール速度や軌道、回転、飛距離が分かるゴルフ等で広く採用)」レベル止まりでしょう。

我々が使用する公共コート、スクールのコートに1面ずつ何億もかけてカメラやレーダーを取り付け解析できる日が来るイメージが付きません。

我々レベルで起きる進化を考えると

今のスマホは4K撮影もできるし、撮影した画像や映像の加工もできます。複数撮影した画像を合成しより鮮明な1枚にするといった事もできますね。2~3年前には技術的に出来なかった事、カメラ付きのパソコンを持っているような感じです。

テニスコートにデータ収集用の機材を設置、バックエンドのシステムで分析できるという未来は簡単には来そうにありません。(海外のスタートアップが新しいアプローチを発明してくる事を期待しますが)

現実的な解で言うと、スマホ2台、もしくはスマホとサブカメラで撮影した映像をアプリ上で解析する事で3Dの映像として確認できるようになる、同時にボール速度、回転量、軌道等も見られるようになる 感じかなと思います。友達と自分のスマホ、同時に別角度で撮った映像をアプリ or サービス上で合成と解析し、3Dデータ化して色んな角度からでも確認できるようになるといった感じです。

ラケットにテニスセンサーを搭載する必要はなく、撮影した画像からスマホで分析可能。「それでは精度が悪くなるのでは?」という疑問も「テニスセンサーで得られるデータがどこまで正しいか分からないし我々はプロではないのだから」でOKでしょう。

わざわざビデオカメラや1眼を買わなくてもスマホで撮る動画で十分

そういう方が殆どだから単体のカメラ、ビデオカメラが売れなくなっています。

アプリを入れてスマホ撮影すればAIが自動で分析してくれる

機能はどこまでいけるかわかりませんがそんな未来は2~3年で来そうです。

※今でも1枚の写真から3Dモデル化するソフトはあります。

その時、今、テニスセンサーを発売している所はどうする? のでしょう。"今現在" の立ち位置のために発売している印象ですから、ビデオカメラや専用カメラのように使われなくなるかもしれないですね。

最終的には、アイアンマンのAIのように、或いはIBMワトソンのCMのように

映像やデータ分析をし、テニス上達のアドバイスまでしてくれるのが望ましい未来

でしょうか。

それは今のテニススクールの問題点を補完するものだと私は思っていますが、いつ実現できるかはちょっと予想ができません。

テニスの未来は明るくない

一般のユーザーレベルで言えばどのスポーツもあまり状況が変わってない。運動する方 = 体育会系ではないもののスポーツの現場がデータや科学に馴染んでいないのは相変わらずです。

上で書いたコーチの話ではないですが「培ってきた経験や歴史」が指導の前提だったりします。高校野球・少年野球の現場然りですね。(体罰問題で精神的な面は弱体化しているのでしょうが)

スポーツとIT技術、ガジェット利用という面では日々小さい進化が繰り返されていますが技術者側もスポーツの現場にうまくコミットできてないのもあまり変わりません。 

両者の壁を埋められるような存在が必要でしょうね。

「テニスのIT化」のような専用のプロジェクトではなく、上で書いたような「2つの映像を解析して3D化して色んな方向から確認できるアプリ」のような色んな用途で使えるようなものが妥当なラインだし、未来を引き寄せるカギかなと思います。

プロ野球球団のように何億もかけて専用システムをテニスコートに取り付けるのは妥当な選択とは言えませんね。

テニス市場や我々を取り巻くテニス環境も30年位前から殆ど変わっていません。常に「選手人気に依存してその時を切り抜けよう」という感じ。大坂選手との親密さアピールも全く実感がないテニス協会が良い例でしょうか。(五輪後は米国籍を取得された方が良いと私は思います。)

他スポーツをリードする位に日本のテニスを変えてやろうという流れが出てきてほしいですが、このまま少子化によるユーザー数の減少、高齢化が進み、テニス市場は今以上に縮小が進みそうですね。