ボレーの疑問、フォアとバックで打点の位置は同じ? (テニス)

フォア側ショット、バック側ショットの大きな違い

テニスでは大きくフォア側で打つショット、バック側で打つショットがありますね。

英語の『fore』は「前部の」という意味の副詞で「fore hand」は (利き手で打つので)手の平側である"手の前側"で『back hand』は手の甲側である"手の後ろ側"でそれぞれ打つといった意味です。(身体を基準に右か左か、利き手側か非利き手側かといった見方ではないです。) 

手の前側・後ろ側

分かりやすいのでストロークで考えますが、フォアハンドストローク、バックハンドストロークでは決定的に違う点があります。

何度か書いていますが『準備段階での利き腕肩の位置』です。

フォアハンドで横向きを取ると利き腕肩は"身体の後ろ側"に下がる

フォアハンドのテイクバック 

バックハンドで横向きを取ると利き腕肩は"身体の前側"のまま変わらない

バックハンドのテイクバック

準備段階として "横向き" を作った際、利き腕肩の位置が全く異なるのが分かります。

準備段階からインパクト前後まで"利き腕肩の位置が身体の前側にあって変わらない" バック側に比べてフォア側のショットは「横向きにより一旦後方に下げた利き腕肩を、体の回転・ねじり戻しにより再び体の前側に戻す事で "腕やラケットの加速距離" を確保している」と言えます。

同時に「腕にある肩・肘・手首・指の各関節も "体の外側から中心に向けて" 柔軟に曲がる。(逆に曲がるのは肩と手首だけ)」という点もフォア側、バック側でボールを打つ際の身体の使い方に違いを必要とさせます。

腕関節の曲がり方1 腕関節の曲がり方2 腕関節の曲がり方3

フォアハンドストロークでは、身体を回転させて一旦下げた利き手肩を前に戻す動きでラケットを加速させ、身体の外側に向けて柔軟に曲がる腕の機能でラケット加速とボールにトップスピンをかける動きに利用しています。(身体のねじり戻し、足で地面を踏む反力 + 若干の腕の引きが初期加速を作る)

フォアハンドストロークのフォロースルー

バックハンドストロークは、利き腕肩の位置が身体の前側にあって変わらないのでフォア側ほど身体を積極的に回転させられません。軽く身体を捻じって戻す動きに内側に曲げた肘や肩等を伸ばす動きを加えてラケットを加速させる、ボールに近づけていく打ち方です。

両手う打ちバックハンドストロークのフォロースルー

多くの場合、我々はこの違いを意識しないままボールを打っています。それまでの日常生活で身体の使い方が身についており、それをスイングに利用できてしまうためです。

ただ、こういった身体の仕組みや機能を "認識" しておく事でラケットでボールを打つという事の理解がより深まるのは間違いないでしょう。例えば「フォアハンドの打ち方はこうです」と説明された時の "言葉に現れていないポイント" に気づけたりします。

私は『自分のテニスを上達させるのはコーチや周りの人ではなく自分自身』と考えているので、自分の理解が深まる "気づき" や "知識" は多く持っておきたいです。

 

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ボレーを打つ際、フォアとバックで同じような打点位置で打つのか?

今更で笑われるかもしれませんがこれは私が最近思っている事です。

ボレーにおける"横向き"とグリップ

初心者がボレーを教わる際は

「ボールに対して横向きを取ってラケットをセット(準備)し、打点位置は身体の少し前辺りで打つ」

といった感じで教わると思います。

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ここから色んな状況に対応できる構え方、ラケットの使い方、足の使い方等を学び、ボレーの最低限のレベルまで上げていくのが最初の目標です。

また、ボレーのグリップはコンチネンタルグリップが基本となりますね。

理由は色々あるでしょうが、時間の無い中でフォアとバックの握り替えをしつつボレーを打つのは殆どの人には難しいですし、ウエスタングリップ等の厚いグリップで握ったまま、その逆側の面でバック側を打つというのもフォア側とバック側の感覚が違い過ぎて扱いづらいでしょう。

ボレーを打つ際、割合的に多く使うのはスライス回転 (ドロップボレーとか顕著ですね)ですから「ストロークでスライスを打つ際は薄いグリップを使う」のと同様、ボレーを薄いグリップで打つのは理にかなっているとも言えるでしょう。

今回の趣旨とズレるので細かく書きませんが、逆回転は重力に逆らって遠くまで飛びやすいです。速度がないと重力と空気抵抗で落下しやすい順回転・トップスピンとは特性が異なります。フラット・スピンは前方向に強く振ってラケット速度を上げる必要がありますが、スライスは肩支点で上から下に (天井から下がる紐を引くように) 打ち、支点である肩の横辺りで打つにはグリップは薄くなければいけない。厚いグリップで打点を前に取ってスライスを打つのはボールに力を加えるのが難しくなります。

ボールが飛ぶ理屈は2つ

テニスでボールを飛ぶにはエネルギーが必要で、エネルギーとしては、

1) 飛んでくるボールが持つ『飛ぶエネルギー』をラケットで反発させる

2) ラケットを加速させて得られる『飛ばすエネルギー』をボールに伝える

の2つが基本となってきます。

ネットにより違い位置で打つ事で「ボールの速度が保たれている」「飛ばす距離も短い」「準備時間がない中で打つ」ボレーはスイングして飛ばすエネルギーを稼ぐより、短い準備時間できちんと正確にボールを捉える事を優先させる必要がある。

その結果「ボレーを打つ際はラケットを振るな」と言われるのでしょう。

飛ばす距離もベースラインからに比べれば短い、相手ボールの速度も比較的残っている、時間の無い中で正確にボールを捉えるための選択です。

逆に、ベースライン付近まで"飛んでくるのを待って"打つストロークは、空気抵抗やバウンドによりボールの速度は低下しており、そこから相手コートの深い位置まで長い距離を飛ばす必要があるので「ボールの持つエネルギーを反発させるだけでなく、自分でラケットを加速させて飛ばすエネルギーを生み出す」必要がある。

結果、ストロークでは接触的にラケットを加速させるスイングをする事で遠くまで飛ばすエネルギーを発生させています。

※もっと極端にボールが持つエネルギーがほぼゼロ、ほぼ自分がラケットを加速させて得られるエネルギーで打つのがサーブです。 

フォア側とバック側の利き腕肩の位置の違いを考えると...

初心者が教わる説明はフォア側・バック側の違いを意識付けをするため極端にやらせてる。完全に近い横向きを作ってからボレーを打つというのは決まりではないし、そういったケースは案外少ないという事は十分承知の上で言っていますが、

・身体に近い打点位置で打つ必要があるコンチネンタルグリップ

・フォア側とバック側で横向きの準備姿勢を取った際の利き腕肩の位置

という2つの要素を考えると

言葉にしなくても何となく "当たり前の事" とされている (ですか?) 気がする

「フォアボレーとバックボレーで身体の前辺りの同じような打点位置で打つ」という説明に疑問を感じる

のです。

横向きを重視してボレーの準備の形を取ると、

バック側はこう

バックボレーの準備姿勢

なのに対し、フォア側はこう

フォアボレーの準備姿勢1

 

フォアボレーの準備姿勢2

いう感じになります。(バック側に比べてフォア側の図は違和感を感じる姿勢ですが、分かりやすいように "少し極端" な形にしています。)

前述したようにバック側は利き腕肩の位置が身体の前方にあって変わらないので、準備の形から、肩を支点にラケットを引き下ろす、前に押す動きができる感じです。

逆に、フォア側で、図の横向きを取ったラケット位置から身体よりも前方向、ボール寄りの打点位置に大きくラケット面を移動させていくには、

1) 身体を回転させて利き腕肩を身体の前側に戻す

フォアボレーのインパクト前後1

2) 腕を前方に伸ばす。その際、手首を甲側に曲げてラケット面をボール方向に向ける。

フォアボレーのインパクト前後2

といった選択肢を取らなければなりません。

※最後の一歩を広く踏み込んで打つ場合など(横向きの方が1歩が広くなる)、状況により下図のように横向きを保って打つケースはあります。一方、身体が向いた方向 (正面方向) に足を進める方がフォア・バックの切り替えや左右への動きはしやすいし、準備時間が取れない場合は横向きを取れないまま、正面向きに近い形で打つ事も多いのがボレーです。

フォアボレーの横向きでのインパクト前後

腕を前方に伸ばした状態では その"1点" でしか打てない

初心者の方だと

「ボールを顔の真正面で見たい。身体よりも前にラケットを出してボールとラケットを両方視野に入れた状態で当てたい。」

といった意識から、2のように腕を前方に伸ばす事でラケットをボールに当てようとしたりしますが、これだと、

「腕を伸ばした "その一点" でボールを打つ。ラケット面越しにボールを一点で押し支える」前提のような姿勢

になってしまいます。

ネット間際に立って相手の打つ速いストロークを「パン」と弾き返すだけなら、ボールのエネルギーを真正面で支えられるこのような打ち方でも良いのでしょうが、

相手がどんなボールを打ってくるか分からない状況では柔軟性に欠ける

ものです。

肩支点で腕を上下左右、前後にある程度余裕をもって対応できる、軸足の位置から踏込み足の "一歩分" も使って色んなケースに対応しやすくする『ゆとり』が欲しいです。

フォアボレーのインパクト前後3

 

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フォア側とバック側で利き腕肩の位置が異なる事と打点位置の関係

ストローク同様、ボレーを打つ際もフォア側とバック側では準備段階における利き腕肩の位置が異なります。

「体の正面に打たれたボールは横向きを作る間もないので正面向きのままバックボレーで対処する」

バックボレー正面

という "推奨" はありますが、

腕の各関節はフォア側では曲がりやすく、バック側では曲がりにくい

ですから、

バック側のボレーなら横向きを作って利き腕肩の位置を身体の前側に置いた方が肩支点で安定的に打てますし、

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フォア側なら完全な横向きでなくても利き腕肩の位置をやや後方に下げる方が色んなボールに対処しやすくなる『懐周りのゆとり』のようなものが持てます。

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このようにボールを打つ際の基準となる利き腕肩の位置がフォア側とバック側で異なる中での「身体からの距離が同じような打点で打つ」という説明。そう打つのが妥当だとするのなら、

「その説明に言葉として含まれていない補足が必要なのではないか?」

と思うのです。

フェデラー選手のボレー練習

フェデラー選手がボレーを打つ様子を見ると、フォア側は利き腕肩のある程度位置を下げた状態、バック側は利き腕肩の位置が身体の前側にある状態で準備をしています。それぞれの状態からボレーを打つ訳ですが、

身体に対する打点の地位はバック側に対してフォア側の方がやや体に近い

と感じるのです。

フォア側は利き腕肩の位置を下げている分、身体の前側にあるバック側よりも "やや手前" でも打てる、打ちやすいと言っても良いかもしれません。

人によってはグリップチェンジしなくてもフォア側にやや厚いグリップで打つ方も居ます。(当然バック側はやや薄くなる) この場合、コンチネンタルグリップに比べ打点はフォア側でやや前、バック側でやや手前になります。それを加味しても利き腕肩を下げて準備するフォア側の方が打点をやや手前に取りやすいのは間違いないでしょう。肩を下げた状態で打点を前にするには腕を突き出すしかないですから。

横向きのままなら身体の後方にある利き腕肩の位置でも ハーフボレー等 (或いは腕を伸ばす事でもっと後ろ側のボールでも) 取れるのがフォア側です。

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フォア側とバック側の違い前提で打点位置を考えるべき?

「フォア側であれば横向きのまま利き腕肩の位置でもボレーが打てます」と言ってしまうとこれからボレーを習う方は混乱されると思います。

だから、導入時は身体の使い方うんぬんはともかく「フォア側・バック側で身体から同じような距離の打点で打ってみましょう」で良いと思うです。

同じような例で、サーブの導入説明において「ラケットダウンした状態からラケットを上に振ってトスしたボールを打点位置で打つ感覚を理解させる」取り組みがあります。

ラケットダウンの状態から打つ

ただ、その後、実際にサーブの上達を目指す練習の中で「ラケットダウンの状態を作る」という "前提" で指導が続くのは疑問があるのです。

物体であるラケットには慣性の法則が働き、停止状態でその場にとどまろうとするラケットヘッド側がグリップ側から引く手や腕をスイング軌道後方・逆方向に引っ張る結果起こるのだラケット位置の逆転、ラケットダウンだと考えます。(リラックスする以外に必要な要素はない位です。)

サーブのおけるラケットダウン状態の発生1

サーブにおけるラケットダウンの状態の発生2

準備段階で身体の前側に利き腕肩があるバックボレーでは、身体の外側から内側に曲がる腕 (肩・肘) を使って曲げた腕を伸ばす形で利き腕肩の位置を基準に肩よりも前方(ネット側)でインパクトする方がボールのエネルギーを支えて反発させやすいです。

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逆にフォアボレーでは身体の外側から内側に曲がりやすい腕 (肩・肘) と手首を甲側に曲げる動きを伴って正面向きから90度横向きの間で利き腕肩の位置を下げる事で打点位置を90度横向きの利き腕肩の位置 (身体の後ろ寄り)から正面向きに近く腕をやや前方に伸ばした位置まで柔軟性を持って打点を取れます。

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腕が窮屈に感じる程、打点を手前に取り過ぎるとラケット面に強く支えられなくなるので "ボレーは前で打つ" というのは真理だと思います。(ボールのエネルギーを反発させるのがボレーの主題でそのコントロールがしやすい姿勢が良い)

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ただ、「身体よりも前で打つのが絶対だ」という思考は「ボレーの打点は前」という指導で育ってきたことからくる思い込みかもしれないと思うのです。

そう思われる方はスイングを伴うボレー (ストロークのように打つスイングボレーではなく) を否定されるかもしれませんし、フェデラー選手がフォアハンドストロークを打つ際のようにフォアボレーでもラケットヘッド側がしなるように前後する動きには注目されないかもしれませんね。(身体の捻じりに対し慣性の法則でヘッド側が取り残される動きでラケットの瞬間的な加速に関係すると考えます。ある意味小さくスイングしている感じ) ボレーは「ラケット面は身体の前にセットして動かさない」のが自分の中での決まりだったりするからです。

私は、今回考えたようなフォア側とバック側で利き腕肩位置や腕の機能と使い方の違い等を踏まえて"前"と説明されるのが妥当なのだろうなと思うのです。

そういった情報を踏まえてボレーの打点を説明されれば、聞く側もボレーに対する理解や「ボールの打ち方を自分考える (=自分の理解が上達に繋がる)」事に繋がるのではないでしょうか。

「ボレーは難しい」と感じるのは『加速したラケットが当たれば飛ぶ』というストロークほどの分かりやすさがないことだろうと思います。

スイングしないなら腕か足で位置合わせしたり、"ボールのエネルギーをうまく反発する"姿勢をうまく取らないといけないですが、例えばローボレーとミドルボレーの境目はないので "それぞれの打ち方を聞くだけ" では自分の理解が追いつきません。

理解が追いつかないから頭や体軸が倒れてしまう、最後の一歩がうまく出ないから腕を伸ばす、手でラケットを操作する等してつじつまを合わせようとする ("飛ばす気持ち"は分かるけど安定的には打てない) といったことが起きますね。

「技術を上げればうまく打てるようになる」というより「出来る人はボレーを打つ際、体をどう使っているのか」と考える方が皆が考える "ボレーの上達" に結びつくように思います。